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神経難病とは
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糖尿病と認知症の話
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地域コミュニティ情報誌とももの連載をお送りします

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No170(2017年11月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は重症筋無力症を取り上げます。これは運動神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)が免疫機能の異常で壊れるために、筋肉に力が入らなくなる病気です。特にまぶたが下がる(眼瞼下垂)、物がだぶって見える(複視)などの眼の症状から始まることが多く、手足の力が入らない、呼吸がしにくいなどの全身の筋肉に症状が出ることがあります。人口10万人あたり12人ほどの患者があり、女性が男性の2倍弱と女性に多い病気です。5歳未満(全体の7%)と30歳から50歳台にかけて発症することが多いとされています。

治療としては、対症的に運動神経から筋肉に伝える信号を強めるコリンエステラーゼ阻害剤、根本的に異常な免疫反応を抑える免疫抑制療法があります。他にも大量のガンマグロブリンを投与したり、血液中の異常な抗体を取り除く血液浄化療法などがあり、病状に応じて選択されます。この病気の特徴として胸腺の異常を伴うことが多いことが指摘されています。なかには胸腺腫という腫瘍を持つことがあり、手術で胸腺腫を取り除くことが勧められます。重症筋無力症はこれまで紹介した神経の変性が進んでいく神経難病と異なり、一部の患者では完治(薬が不要になる)が望める病気です。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No169(2017年9月・10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は多発性硬化症を取り上げます。これは神経細胞から出た神経線維を覆っている髄

鞘(ずいしょう)が免疫機能の異常によって壊れる病気(自己免疫による脱髄性疾患)です。神経線維は、電気製品のコードと同じく周囲を絶縁体(髄鞘)によって覆われていますが、これが壊れるために神経同士の連絡が繋がらなくなりいろいろな症状が起こります。寒い地域に住むひとに多く、北ヨーロッパでは人口10万人あたり100人以上の患者がいるところもありますが、日本では10万人あたり8〜9人程度と考えられています。

 症状は脱髄現象が神経系のどこに起こるかで人によって異なります。視神経が障害されると視力低下、脳に起こると運動麻痺や感覚障害、物がだぶって見える、呂律が回らない、ふらついて歩けない、脊髄に起こると下半身麻痺や排尿の障害などと多彩です。このような脱髄性病変が年に数回から数年に1回程度、神経系のあちこちに出没して再発と回復を繰り返しながら経過します。最近では特殊な自己抗体(AQP4抗体)が陽性で視神経と脊髄を主に障害する病型(視神経脊髄炎)も知られています。治療は病型に応じた免疫抑制療法がおこなわれます。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No168(2017年6月・7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は筋萎縮性側索硬化症を取り上げます。1年間で新たにこの病気になるのは人口10万人あたり1〜2.5人で、全国的には約1万人の患者さんがいます。60〜70歳台に多く発症しますが、もっと若いころに病気になる人もあります。なかには遺伝子の異常が原因となる遺伝性の場合もあります。最近ではTDP-43という異常蛋白質の関わりが注目されています。症状の進行を遅らせる薬剤の研究も進められ、日本で開発された治療薬も近年使われるようになっています。

 多くは手指の使いにくさや手に力が入らない、腕の筋肉が痩せるなどの症状で始まります。なかには呂律がまわりにくい、食事が飲み込みにくい、歩きにくい、歩くとつまづくなどの症状で始まる場合、稀には呼吸が十分できないなどで気がつく場合もあります。いずれにしても運動神経系の障害によって身体の各部の筋肉に力が入らなくなることが病状の主体です。患者さんごとに経過は異なりますが、一般に発症から3年程度で自力で呼吸することができなくなります。近頃では人工呼吸器を使って、その後も5年、10年と過ごされている方は少なくありません。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No167(2017年4月・5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は大脳皮質基底核変性症を取り上げます。動作が
鈍くなる、筋肉に特有の硬さが生じるなどのパーキンソン症状と力ははいるが手足が思うように動かせなくなる(運動失行)などの大脳皮質症状を併せ持つ病気です。人口10万人あたり2名程度の稀な病気で、40歳以上(60歳代が最も多い)に発症します。一般に遺伝性はありません。症状はどちらか片方の手足に強い(左右差がある)のが特徴です。画像的にも非対称性の大脳萎縮(前頭葉、頭頂葉に強い)がみられます。しかし最近では症状の左右差が目立たない例、認知症が前景に立つ例、前回取りあげた進行性核上性麻痺に類似した例など、臨床像の多様性が知られるようになり、診断が難しい場合も少なくありません。

 根本的な治療法はないので、個人の症状に応じた対応がなされます。一般に抗パーキンソン病薬や筋弛緩薬、抗けいれん薬などが用いられますが、効果は限定的です。認知機能低下に対して抗認知症薬が用いられることもあります。発症から寝たきりになるまでの期間はパーキンソン病よりも短い(5〜10年)と言われており、その後の経過は全身状態の管理や合併症の出現などにより左右されます。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No166(2017年2月・3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は進行性核上性麻痺を取り上げます。この病気は人口10万人あたり10〜20人程度
と推測されています。50歳台から70歳台に多くみられ、転びやすい、眼の動きが制限されて下を見ようとしてもうまくできない、喋りにくい、飲み込みが悪い、認知機能の障害が起きるなどの症状が代表的です。最近ではこのような典型例以外にもパーキンソン病類似のケースやすくみ足が先行して長期間経過するケースなど、特殊なタイプが知られるようにもなってきました。

 この病気は最初に転びやすいことで気づかれることが多いですが、これは姿勢が不安定になるとともに危ないと判断する能力が低下するために起こります。家族が何回も注意しても不意に歩き出して転倒を繰り返す傾向にあります。バランスを崩したときに手で防御することも忘れるので顔面や頭部に怪我をすることが少なくありません。転倒を繰り返すたびに徐々に運動機能が低下して、4〜5年で寝たきりになることもあります。食事に関しても口の中のものを飲み込まないうちに次々と食べ物を詰め込んでしまうので注意が必要です。抗パーキンソン薬などが使われますが効果は限られています。筋力維持の運動やバランス訓練、発声・嚥下の練習などのリハビリを続けることが重要です。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No164(2017年1月・2月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は多系統萎縮症を取り上げます。この病気は全国で約1万2千人の患者さんがおられます。主要な症状は動作緩慢などのパーキンソン症状、ふらつきなどの運動失調症状、排尿障害などの自律神経症状です。臨床経過から次の3つの病型に分けられます。1)線条体黒質変性症(約30%):パーキンソン症状から、次第に運動失調症状や排尿障害などの自律神経症状が加わる、2)オリーブ橋小脳変性症(約60%):運動失調症状から次第にパーキンソン症状や自律神経症状が加わる、3)シャイ・ドレーガー症候群(約10%):自律神経症状から、次第にパーキンソン症状や運動失調症状が加わる。

運動失調症状にはタルチレリン(商品名:セレジスト)、パーキンソン症状には(本症では効果が期待しにくいが)抗パーキンソン病が用いられます。自律神経症状には各々の症状(排尿障害、立ちくらみ・・)に応じた治療が行われます。本症のみならず神経難病一般において、活動が低下することで筋力が低下してより転びやすくなる、意欲が低下してうつ状態になり寝たきり状態になる「廃用症候群」を防ぐことは重要です。その意味からも筋力増強訓練、反復訓練による協調運動改善の訓練などリハビリテーションは機能維持に有効とされています。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No164(2016年11月・12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


代表的な神経難病について解説していきますが、このシリーズではパーキンソン病以外の稀少難病について取り上げます(パーキンソン病は別のシリーズで解説します)。

今回は脊髄小脳変性症を取り上げます。本症は全国で約3万人の患者さんがおられます。その三分の二が原因不明(孤発性)、三分の一が遺伝性とされています。孤発性の大部分は多系統萎縮症(次号で解説)という疾患です。話がややこしいですが、広義の脊髄小脳変性症のなかに多系統萎縮症が含まれると考えてください。この病気では小脳、脳幹、脊髄などの神経細胞が脱落・消失してそれらの萎縮がみられます。主な症状は運動失調(力は入るが目的の動作がうまくできない)で、その他は個々の例ごとに付随する症状(筋肉のつっぱり感、排泄の障害・・)は異なります。この運動失調のために目的の動作をする際にいくつもの筋肉を協調して動かすことができなくなり、バランスが悪くなって歩行が不安定になる、物を取ろうとしても手がうまく届かない、声の大きさや高さが安定せず喋りにくいなどの症状がみられます。治療薬としてはタルチレリン(商品名:セレジスト)があります、ほかにも付随する症状に応じた薬が用いられます。集中的な入院リハビリが有用との報告もあります。

  神経難病とは

地域情報誌「ともも」、No163(2016年9月・10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


難病とは昭和47年の「難病対策要綱」によって、1)原因不明、治療方針未確定、かつ後遺症を残す恐れが多い疾病、2)経過が慢性にわたり、経済的な問題のみならず介護などに人手を要するため家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病と定義され、難病医療がすすめられてきました。そして平成26年になって「難病の患者に対する医療費等に関する法律」が新たに定められて、1)発病の機構が明らかでない、2)治療方針が確立していない、3)稀少な疾患である、4)長期の療養を必要とするという基準が設けられました。さらに5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約1%程度)に達しない、6)客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している疾病は医療費助成の対象とする「指定難病」として扱われることになりました。この指定難病は平成27年度には306疾患、約150万人の患者さんが認定され、1820億円の事業規模になっています。

難病には各種の臓器が障害されるものがありますが、神経難病は脳や脊髄、末梢神経等の神経細胞や筋肉などの細胞が障害される原因不明の疾病を指します。そのなかには次第に神経細胞が脱落・消失する神経変性疾患や脱髄性疾患、免疫異常による疾病などが含まれます。次回から代表的ないくつかの神経難病について解説します。

  新しい認知症疾患

地域情報誌「ともも」、No162(2016年6月・7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


最近注目の認知症として前回の嗜銀顆粒性認知症に引き続き、今回は神経原線維変化性認知症を取り上げます。

以前からアルツハイマー型認知症(AD)と同じように海馬領域に多数の神経原線維変化(主体はタウ蛋白)を伴うが、老人斑(主体はアミロイドβ蛋白)をほとんど認めない認知症がADの亜型として知られていました。その後、日本人の研究者の報告からこの一群が新しい認知症であることが認識されるようになりました。この神経原線維変化性認知症は主に後期高齢者に記憶障害で始まります(発症は加齢と伴に増加し、90歳以上では認知症の20%を占める)。進行はADに比して緩徐で、記憶以外の認知機能は比較的長く保たれること、人格の変化なども起こさないことが特徴とされています。画像的にはADや前回の嗜銀顆粒性認知症と同様に海馬領域の萎縮が見られるので、その鑑別は難しいところです。将来的には現在開発中のアミロイドイメージングやタウイメージングが実用化されるとこれらの鑑別に役立つ可能性があります。

本症も嗜銀顆粒性認知症と同様にドネぺジルなどのアセチルコリン系を賦活する抗認知症薬の有効性は示されていないので注意する必要があります。

  新しい認知症疾患

地域情報誌「ともも」、No161(2016年4月・5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


最近の認知症学の進展により新しい認知症疾患が知られるようになっています。ここでは嗜銀顆粒性(しぎんかりゅうせい)認知症と神経原線維変化性認知症を取り上げます。

嗜銀顆粒性認知症はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症とならんで変性型認知症の重要な原因疾患のひとつであることが示唆されています。この認知症では特有の異常構造物である嗜銀顆粒(主体はタウ蛋白)が、側頭葉内側から頭頂葉にかけて出現します。症状の特徴としては、記憶障害が前景にたちますが、易怒性や性格変化、性的行動、触法行為(万引きなど)などの前頭側頭葉型の精神症状を伴います。アルツハイマー型認知症(AD)に比して、遂行機能(物事を段取り良く行う能力)の障害が軽度、認知症の進行自体も緩徐であることが指摘されています。画像的にはADのように海馬領域の萎縮(VSRADで初期からZスコア高値)が見られますが、左右差があることが多いとされています。

本症では臨床的にも画像的にもADと似ているところがありますが、ドネぺジルなどのアセチルコリン系を賦活する抗認知症薬は効果しないので注意する必要があります。

  糖尿病と認知症の話

地域情報誌「ともも」、No160(2016年2月・3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


糖尿病と認知症の関係で忘れてはならないのは低血糖の影響です。一般に血糖が70mg/dl以下になるとグルカゴンなどの血糖上昇ホルモンが放出されます。50mg/dl以下になると脳の機能障害で精神・神経症状が見られるようになります。30mg/dl以下になると意識レベルが低下して昏睡に至ります。

このような低血糖発作は認知症の発症を2倍高め、認知症は低血糖発作を3倍高めるとされており、低血糖と認知症は双方向性の関係があります。また、高齢者における低血糖は転倒のリスクを高めるとも言われています。さらに、糖尿病における非致死的合併症はヘモグロビンA1cの上昇とともに増加しますが、死亡率はA1c6.4%未満(A1c基準値=4.6〜6.2%)ではむしろ上昇(Jカーブ効果)することも報告されています。

重症低血糖を起こしやすい患者の特徴としては、高齢者、スルフォニルウレア剤(特に腎機能低下者では要注意)かインスリンを使用、ヘモグロビンA1cが過度に低値などが挙げられています。糖尿病の治療では加齢と伴に適時薬を見直すことが重要で、漫然と投薬を継続していると薬が効き過ぎてくる可能性があります。糖尿病を持つ認知症患者では、食事や薬剤の管理だけでなく、体調不良時(シックデイ)の血糖管理など注意すべき点が多々あります。

  糖尿病と認知症の話

地域情報誌「ともも」、No159(2015年12月・2016年1月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回は脳における特異的なインスリンの作用(海馬などにインスリン受容体が多く存在し、学習・記憶に関与する)について述べました。最近ではインスリン経鼻投与(脳内に直接的に移行し、血中インスリン濃度を変化させない)による認知機能の改善効果が報告されており、新たなアルツハイマー型認知症(AD)の治療法として期待されています。米国では点鼻インスリンがADの進行を抑制できるかの臨床研究が現在進められているそうです。

高血糖自体も神経機能に悪影響を及ぼします。神経細胞内に過剰に取り込まれたブドウ糖は細胞内代謝やシナプスの可塑性を障害して、脳機能を落とします。一般に血糖値が270〜300mg/dlを超えると認知機能(情報処理速度、注意、記憶など)の低下が可逆性に出現すると言われています。

近年、AD病変や血管性病変とは関連なく、糖尿病による代謝障害(高血糖および低血糖を含む)が主体となって認知機能の低下が生じる「糖尿病性認知症」の存在が指摘されています(東京医大・羽生、2012)。これは、高齢、ヘモグロビンA1C高値、インスリン治療例が多い、糖尿病罹患歴が長い、大脳萎縮が明らかだが海馬萎縮は軽度、注意力障害が高度だが遅延再生の障害は軽度、進行は緩やかなどの特徴を持つ一群とされており、注目を集めています。

  糖尿病と認知症の話

地域情報誌「ともも」、No158(2015年11月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


 脳とインスリンのはなしの続きです。インスリンは脳と筋肉ではその働きが異なります。

筋肉細胞はインスリンの働きでブドウ糖を取り込んでエネルギー源としています(筋肉はインスリンの標的臓器)。その際、筋肉ではインスリンがインスリン受容体に結合することで、細胞内のGLUT4(GLUTとはグルコース輸送体のことで、組織によっていくつかの亜型に分かれる)が細胞膜上に移動してブドウ糖を細胞内に取り込みます。

一方、脳神経細胞ではGLUT1やGLUT3がブドウ糖を取り込みますが、これらはインスリンを介さず作用するため、ブドウ糖はインスリンとは無関係に脳神経細胞に取り込まれています。脳には特異的なインスリン受容体があり、海馬、視床下部、扁桃体、嗅球、大脳皮質、帯状回などに密に分布しています(脳もインスリンの標的臓器)。インスリンは脳内では学習、記憶、摂食行動やエネルギー調整などに作用しています(例えば、海馬においてはシナプス可塑性を促進することで記憶の成立・強化に大きな役割を果たす)。また、モノアミン系の神経伝達物質の合成にも関係しており、脳内で神経保護的に作用しているとも言われています。

  糖尿病と認知症の話

地域情報誌「ともも」、No157(2015年9・10月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は糖尿病でみられる高インスリン血症とアルツハイマー型認知症の話しです。糖尿病ではインスリンの働きを妨げる物質が増えてインスリンの効果が低下した状態になることがあり、これをインスリン抵抗性と呼びます。肥満、運動不足、高脂肪食などはインスリン抵抗性を高める方向に作用します。インスリン抵抗性が高まると血糖がより上がるために、さらに多くのインスリンが分泌されて高インスリン血症を招きます。

この際に脳ではインスリンの移行が妨げられて(ダウンレギュレーション)、低インスリン状態になり脳内のインスリン作用不足が生じます。脳内ではインスリンはアルツハイマー型認知症の異常蛋白であるアミロイドβを細胞外に分泌する作用があり、またもう1種類の異常蛋白のタウ蛋白の代謝にも影響しているので、糖尿病ではアルツハイマー型認知症の変化が進むことになります。さらに、インスリンを分解する酵素はアミロイドβを分解する作用もあるので、高インスリン血症による相対的なインスリン分解酵素の低下がアミロイドβの分解系の機能の低下を招きます。したがって最近ではアルツハイマー型認知症は「脳の糖尿病」、「3型糖尿病」とも呼ばれるようになっています。

  糖尿病と認知症の話

地域情報誌「ともも」、No156(2015年7・8月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


糖尿病では認知症の発症のリスクが高いことが知られています。国内外の報告をみると、糖尿病患者では糖尿病がない人に比して、アルツハイマー型認知症が1.5倍、血管性認知症が2.5倍多いことが示されています。これから数回に分けて糖尿病と認知症の関連について述べます。

糖尿病では、脳血管の動脈硬化性変化、インスリン抵抗性(インスリンが効果しにくくなるため血糖が上がる)に伴う高インスリン血症、糖毒性(高血糖による神経細胞への毒性)、また治療に伴う低血糖などの複数の因子によって認知症をきたします。

脳血管の動脈硬化性変化としては、比較的太い血管の狭窄・閉塞による脳梗塞、微小血管の硬化による潜在性の脳虚血があります。前者は血管性認知症に結び付いて、再発を重ねるごとに認知機能は階段状に低下します。後者は認知機能の基盤である全般的な脳機能の低下に関係し、アルツハイマー型認知症の危険因子になります。認知症の前段階である軽度認知機能障害(MCI)の患者に、動脈硬化をきたしやすい糖尿病や高血圧、脂質異常症の包括的治療を行うと、アルツハイマー型認知症への移行が約40%減少したとの報告があります。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No155(2015年4・5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン(編集:内山 真、平成24年)」による睡眠障害対処の12の指針の続きです。

昼寝するなら15時前に20〜30分:長い昼寝はかえってぼんやりのもと、夕方以降の昼寝は夜の睡眠に影響します。

眠りが浅いときには、むしろ積極的に遅寝・早起きに:寝床で長く過ごし過ぎると熟睡感が減ります。

睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意:背景に睡眠に関わる病気があり専門治療が必要な場合があります。

十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に:長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談しましょう。車の運転にも注意してください。

睡眠薬代わりの根酒は不眠のもと:睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因になります。

睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全:一定時刻に服用して就寝してください。アルコールとの併用は禁止です。
我々は人生の三分の一ほどを寝ている時間にあてています。最近の研究では、睡眠は「脳のスイッチをオフにした状態」ではなく、「積極的に脳機能の整理・点検を行っている重要な時間」であることがわかってきました。充実した生活を送るには充実した睡眠が必要です。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No153(2014年12・1月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回と次回で「睡眠障害の診断・治療ガイドライン(編集:内山 真、平成24年)」による睡眠障害対処の12の指針を紹介します。

/臾音間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分:もともと睡眠時間の長い人や短い人がいます。睡眠時間は季節によっても変化します、必ずしも8時間の睡眠時間にこだわることはありません。年齢とともに睡眠時間は短くなります。

∋彪稱を避け、寝る前には自分なりのリラックス法:就寝
4時間前からのカフェイン摂取(日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)や1時間前からの喫煙は避けましょう。軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニングはお勧めです。

L欧燭なってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎ過ぎない:意気込んで眠ろうとすれば、頭がさえてかえって寝つきが悪くなります。

て韻源刻に毎日起床:早起きが早寝に結び付きます。休みの日にだらだら寝過ぎないこと。

ジの利用で良い睡眠:目が覚めたら日光を取り入れて体内時計をスイッチオン、夜は明るすぎない照明にしましょう。

Φ則正しい3度の食事、規則的な運動習慣:朝食は心身の目覚めに重要です。夜食は摂るとしてもごく軽めにしましょう。運動習慣は熟睡を促します。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No152(2014年11月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


睡眠中でも脳の活動がすっかり止まっているわけではありません。睡眠中に脳神経細胞の電気的活動をみる脳波を調べてみると、眠りが深くなるにしたがってゆっくりとした波形(徐波)となり脳の活動が低下していきますが、一定時間が過ぎると起きているときと同じような波形が現れてきます。徐波の時期の睡眠は徐波睡眠(ノンレム睡眠)、覚醒状態に近い脳波の時期の睡眠はレム睡眠と呼ばれます。

我々は一晩の睡眠中にこの徐波睡眠とレム睡眠のサイクルを数回繰り返しています。なお、レムとはこの時期に目がキョロキョロと動く(Rapid Eye Movement)のが瞼の上からもみられることから名づけられています。このレム睡眠の間は夢を見ていると言われています。

最近の研究では、徐波睡眠の時には脳の休息を利用して神経回路の整理(シナプスの最適化・・)を行い記憶を強化しており、レム睡眠の時は記憶の内容を整理しているのではないかと考えられています。「寝る時間を惜しんで勉強する」のは、かえって効率の悪い学習法のようです。
また、若い人と高齢者の睡眠時の脳波をくらべてみると、高齢者では深い徐波睡眠の時間が短くなっていて、ぐっすりと眠ることが困難になっているのがわかります。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No151(2014年9・10月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回は、しっかり起きておくために重要な役割(覚醒作用の維持)を果たしているオレキシンについてふれました。最近ではこのオレキシンに関して、いろいろな知見が知られるようになりました。

ナルコレプシーという病気があります。日中に突然耐え難い眠気に襲われ、大事な試験中や重要な会議中にも居眠りを繰り返してしまう睡眠の異常(過眠症)です。ほかにも、寝入りばなの運動麻痺(睡眠麻痺=いわゆる金縛り)や幻覚(入眠時幻覚)、笑ったり・驚いた時などに発作的に全身の力が抜ける(情動脱力発作)などを伴います。比較的若いひとに多く(多くは10代半ばで発症)することが多く、学業や仕事、車の運転などに支障をきたします。このナルコレプシーでは90%以上のひとで脳脊髄液中のオレキシンが著減していることが判明し、何らかのきっかけでオレキシン細胞が脱落してしまうことが病気の原因であると考えられるようになりました。現在、新たな治療薬の研究がなされつつあります。
また、オレキシンの働きを弱めることでより自然な睡眠に導く新たな作用機序の睡眠導入剤が開発され、今年から使うことができるようになっています。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No150(2014年7・8月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は起きている状態を保つための仕組みである覚醒中枢についてです。覚醒に働く中枢としては脳幹部のモノアミン系(青斑核、縫線核など)の各種の神経系が作用しています。ほかにも脳深部のヒスタミン系(結節乳頭体核)やアセチルコリン系(前脳基底核)なども協同して、覚醒の発現・維持や大脳皮質の活性化が起こります。

これらの神経系に障害が起これば、覚醒・睡眠の異常が起こります。アルツハイマー型認知症では前脳基底核のアセチルコリン系の機能低下があるので、脳の働きが低下して睡眠・覚醒のサイクルが乱れがちになります。それに加えて体内時計に従って発現する睡眠誘発因子のメラトニンの低下もあるので、ますます睡眠パターンが狂ってしまいます。違法薬剤である覚醒剤は脳幹部の青斑核のノルアドレナリン系に強く作用して覚醒作用を生じます。ノルアドレナリンは交感神経系の過緊張を起こして心臓に悪影響きたすので、覚醒剤の過量・連用は命に関わります。
最近では覚醒作用を維持するために視床下部外側野から分泌されるオレキシンと言う物質が重要であると言われています(これは日本の櫻井先生が世界で初めて発見したものです)。オレキシンは空腹や情動でも分泌が促進されるので、「おなかがすいて眠れない」、「興奮して眠れない」などの現象が起きます。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No149(2014年5・6月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


ひとが眠るのは体内時計の働きのみではありません。睡眠・覚醒を繰り返すには、眠るための睡眠中枢と起きているための覚醒中枢が相互に働く必要があります。

起きている時間が長くなり疲れてくると、眠気を促す物質である睡眠物質(現在では30種類以上の睡眠物資が見つかっています)が脳内に増えていきます。これがあるところまで達すると、睡眠中枢のスイッチが入り、覚醒中枢のスイッチが切れます。睡眠とは貯まった睡眠物質を一旦清算するためのものとも言えます。したがって、これから先の睡眠不足に備えて休みの日に「寝だめ」をすることは、医学的には無意味です。

さて少し言葉が難しくなりますが、睡眠物質(と体内時計からの刺激)は脳の視床下部にある腹外側視索前野(VLPO)の睡眠中枢に作用し、GABAと言う物質を介して、脳幹などにある覚醒中枢(各種モノアミン系神経核など)の働きを抑えます。その結果、ひとは眠りに落ちます。

風邪薬やアレルギーの薬で眠くなる場合がありますが、これは含まれている抗ヒスタミン剤が覚醒中枢のひとつであるヒスタミン神経核の働きを抑えるためです。また、コーヒーやお茶のカフェインは睡眠物質のひとつのアデノシンの働きを抑えるために眠れなくなります。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No148(2014年4月)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


体内時計は睡眠・覚醒の生体リズムを作っていますが、このリズムが乱れる場合があります。典型的なものはジェット機での旅行による時差ぼけです。時差が5時間以上あるところにジェット機で移動すると、不眠や過眠などの症状が起こることがあります。この場合2−3日滞在すると体内時計がリセットされて症状はなくなります。

このようなきっかけがなく生体リズムが徐々に乱れる場合(概日リズム睡眠障害)もあります。そのひとつに寝る時間がだんだんと遅くなって、昼頃にならないと起きられなくなる、「睡眠相後退型」の概日リズム睡眠障害が知られています。このタイプは若い人に多く、高校生の0.4%にみられるとも言われます。無理やり朝起きて学校や仕事に行っても、眠気や集中力低下で学校生活・社会生活に大きな支障をきたします(不登校や早期退職の一因にもなっているようです)。

この場合、睡眠薬による入眠時間の調整はあまり効果ありません。入眠時間をあえてすこしずつ遅らせていき、生活パターンに合致したところで生体リズムを固定(時間療法)し、生活指導や高照度光照射、精神療法などを組み合わせてそれを維持していく工夫が必要です。前回も述べたように睡眠・覚醒のリズムを乱さないためには、規則正しい生活が最も重要です。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No147(2014年2月・3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


さらに体内時計の続きです。朝に目から入った光の刺激は脳内の視交叉上核に至り、14〜16時間後に近接する松果体という組織から睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌させます。メラトニンは手足の血管を拡張させて身体の内部の体温(深部体温)を低下させて、自然な眠りに導きます。子供が眠くなる前に手足が暖かくなるのはこのためです。このメラトニンは眠りに導くだけでなく、抗酸化作用や免疫賦活作用などもあり、体調を整えるために重要な役割を果たしています。

メラトニンは加齢とともに分泌が減少していきます。このため高齢者では不眠の訴えが多くなりがちです。さらにアルツハイマー型認知症では、よりメラトニンが減っているので睡眠・覚醒の乱れが顕著になることが少なくありません。最近では、従来の睡眠導入剤とは別に、メラトニン系に作用して本来の睡眠・覚醒のリズムに近づける薬剤も開発され使えるようになっています。

いずれにしても、自然な睡眠・覚醒のリズムを作る体内時計が乱れないようにするには、起床時刻を毎日一定にする、朝起きたら日光を浴びる、朝食をしっかり食べる、夜は必要以上に光にあたらないなどの基本的な生活上の注意が必要です。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No146(2013年12月・2014年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


体内時計の続きです。体内時計のスイッチは朝の光です。夜に自然な睡眠につくには朝は定時に起きて、日中に十分日光を浴びることが重要です。このような1日の睡眠・覚醒のリズムを概日リズムと呼びます。ひとの元々の概日リズムは24時間よりやや長めに設定されています。したがって毎朝光を浴びて、体内時計をリセットする必要があります。宇宙飛行のように1日の明暗の変化がない環境で過ごす場合には、宇宙船内に人工的に明暗サイクルを模した環境を作っています。

現代は24時間社会と言われ終夜営業の店舗も増えていて、夜更かしがしやすい世の中になっています。またシフト勤務などで本来なら眠っている時間帯にも働いているひとも増えています。すなわち現代社会は体内時計が狂いやすい環境であると言えます。このような生活習慣の乱れによる体内時計の不調に、食生活の乱れや運動不足などが加わっておこる不眠は「現代型不眠」と呼ばれ、近年増加傾向です。また日常的にもLED照明、パソコンやスマートフォンなどの画面からでるブルーライト(波長460nm前後の光)は、より視交叉上核に作用して体内時計を乱しやすいとされています。夜遅くまでこれらの光を浴びない注意が必要です。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No145(2013年10・11月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


「夜暗くなると眠くなる」、「睡眠不足が続くと昼間でも眠くなる」などは誰でも経験することです。また、「徹夜しても朝になれば元気が出る」ことを感じたことがあるひともいるかもしれません。このような睡眠と目覚め(覚醒)はどのような機序で生じるのでしょうか?

睡眠を調節しているメカニズムには、夜になると眠くなるように働く体内時計と疲れると眠くなるように働く恒常性調節系のふたつの仕組みがあります。まず体内時計について解説します。

ひとは夜行性の動物ではないので、「夜になると眠り、朝になると目覚める」のが自然です。このようなパターンを作り出しているのが体内時計です。この体内時計は身体のあちこちの組織に存在しますが、その中心(マスタークロック)となるのは脳のなかにある視交叉上核(しこうさじょうかく)とよばれる部位です。視交叉上核は朝に光を浴びることでスイッチが入り、それから14〜16時間すると近接する松果体(しょうかたい)に対してメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンを分泌するように指令を出します。メラトニンの分泌が高まると体温が低下して、自然の睡眠が導かれます。そして数時間するとメラトニンに分泌が減り、日中の活動に適した副腎皮質ホルモンが増加して朝に目覚めることになります。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No144(2013年8・9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


睡眠時間が短くなれば肥満や糖尿病、高血圧になりやすいことが知られています。すなわち睡眠不足は生活習慣病の危険因子(リスクファクター)と言えます。

‘体内時計.jp‘というサイトでは睡眠不足と各種の生活習慣病のデータが示されています。例えば、睡眠時間が5時間未満の生活を続けているひとは、睡眠時間が5時間以上のひとの1.36倍肥満になりやすいそうです。さらに糖尿病では37%に不眠の訴えがあり、1年以上不眠が続くと正常のひとと比べて1.7倍糖尿病になりやすいと報告されています。また高血圧で治療を受けているひとの30%は不眠を経験していて、一般の人よりもその割合が高いとのことです。睡眠時間が5時間以下のひとは、睡眠時間が7〜8時間のひとの1.32倍高血圧になりやすいと言われています。

このように睡眠・覚醒のリズムの乱れから食欲に関係するホルモンや血糖を調節するインスリンなどの分泌が乱れて肥満や糖尿病を招き、交感神経系の過緊張状態から血圧の上昇をきたして、ひいては脳卒中や心筋梗塞などの血管病を引き起こす危険があります。日本は海外に比して平均の睡眠時間が短い傾向にあり、特に最近では働き盛りの40代、50代の睡眠時間が短くなっています。より良い睡眠、質の良い睡眠をとることは体調管理において大変重要なことです。

  より良い眠りのために

地域情報誌「ともも」、No143(2013年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


これからしばらくは「睡眠」について、お話しします。なぜ眠くなるのか、何のために眠るのか、脳にとって睡眠の役割とはなにか、よりよく眠るために必要なことは・・などを解説します。睡眠についてわかりやすく解説した書籍としては、「睡眠の科学」(櫻井武著、講談社ブルーバックス)、「ヒトはなぜ眠るのか」(井上昌次郎著、講談社学術文庫)などがあります。本稿もこれらの書籍を参考にしました。

さて、ひとはどのくらい眠らずに過ごせるでしょうか? 薬剤(興奮薬・・)などを用いることなく断眠(眠らずにいること)した最長記録は264時間(11日間)とされています。これは1964年に当時17歳の高校生が作った記録で、その経過は睡眠科学の専門家によって確認されています。それによると断眠後2日目で怒りやすくなり、4日目で妄想が出現し、7日目で身体が震えだして言語の障害などがみられたとのことです。断眠終了後は一気に15時間寝て、1週間後に体調は回復したそうです。

動物実験では、ラットを1週間断眠させると体温が低下し、体重も減っていきます。そして3〜4週間すれば病気に対する抵抗力が落ちて、体内の常在菌による敗血症で死亡することが知られています。確かに「睡眠」は動物にとって必要不可欠な現象と言えます。

  様々な認知症

地域情報誌「ともも」、No142(2013年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は薬剤による認知症症状の話題です。高齢者ではいくつもの病気を持っていることが多いので、服用する薬剤も増えていきます。また内臓の働きが衰えるために、薬剤の吸収が悪くなったり代謝や排泄機能が低下するなど、薬剤に対する反応性が変化します。総じて高齢者では薬効が強く出ることが多く、相互作用のリスクが高まることに注意する必要があります。

高齢者において認知機能を低下させる薬剤としては、抗不安薬・睡眠薬、抗うつ剤などが頭に浮かびますが、その他にも胃酸を下げる消化器の薬(H2ブロッカー)や抗菌剤(ニューキノロン系やカルバペネム系)、非ステロイド系消炎鎮痛剤などでも精神症状を起こして認知症様になる場合があります。血糖を下げる薬(経口血糖降下剤)が効き過ぎて低血糖になり、意識レベルが低下して反応がおかしくなることも見受けられます。

高齢者の薬物治療では、薬剤は必要最低限にする、服用方法はなるべく簡単なものにする、個々の生理機能に応じた薬剤を選ぶ、定期的に薬剤の必要性について見直す、物忘れや精神症状が出現した時には薬剤性の可能性も考えるなどの注意が必要です。

  様々な認知症

地域情報誌「ともも」、No141(2013年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は慢性硬膜下血腫の話題です。脳は3枚の膜に包まれていますが、硬膜は最も外側の膜になります。軽く頭を打った後、しばらくして(2〜3週から2〜3か月後)から硬膜と脳の間に血液が溜まる場合があり、これを慢性硬膜下血腫(血腫=血液の塊)と呼びます。じわじわと血液が溜まるので、症状を自覚するのに日にちがかかることが少なくありません。症状としても麻痺症状などの運動機能に障害が起こればまだわかりやすいですが、軽い意識障害だけの場合には「認知症」と似た状態になることもあります。診断にはCTあるいはMRIが有効です。血腫による脳への圧迫が少なく神経症状がない場合は、自然消退することもあるので、経過観察でも構いませんが、それ以外では手術で血腫を取り除きます。血腫が取り除けられれば速やかに神経症状は改善し、後遺症なく回復することが期待できます。

このほかにも認知症症状で始まる脳腫瘍も少ないながら存在します。脳腫瘍でも良性の髄膜腫から悪性の神経膠腫など、いろいろな種類があります。なかには手術で完全に取り去り、認知症症状が治る場合もあります。いずれにしても認知症症状が疑われれば、一度は正確な画像診断を行うことは必要でしょう。

  様々な認知症

地域情報誌「ともも」、No140(2013年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は正常圧水頭症(NPH)の話題です。脳は頭蓋骨のなかで脳脊髄液に浮かんだ状態になっています。成人の脳脊髄液量は100〜150mlですが、1日の生産量は約500mlですので1日に数回程度入れ替わっていることになります(脳脊髄液循環:脳室内の脈絡叢で作られ、上矢状洞のくも膜顆粒から吸収されて静脈内に流れ込む)。この脳脊髄液の流れが滞ると脳室に脳脊髄液が溜まり、脳室が拡大して水頭症と呼ばれる状態になります。正常圧水頭症では脳脊髄液の吸収障害により水頭症をきたした状態です。これはくも膜下出血に引き続いて起こることが多いのですが、特にそのような原因のない特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼ばれる場合もあります。
正常圧水頭症でよくみられる症状は、’知機能障害、排尿障害、J盥埔祿欧任后,任聾当識障害は比較的軽度ですが、前頭葉機能の低下で注意力の低下などが目立ちます。△任惑意が我慢できず、尿失禁が見られます。では両脚を開き気味にして、あまり足を上げずにチョコチョコとした独特の歩き方になります。MRIなどの画像診断で特有の脳室拡大などの変化を認め、実際に脳脊髄液を30〜50mlほど抜いてみて症状の変化を観察して改善があれば脳脊髄液を抜くチューブを植え込む手術(シャント術)が行われます。

  様々な認知症

地域情報誌「ともも」、No139(2013年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


血管性認知症の続きです。血管性認知症は文字通り「血管の病気」です。認知症症状は、傷んだ血管による脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)の後遺症としての症状です。一旦傷んでしまった血管を蘇らすことは困難ですので、血管性認知症では予防対策が重要です。これには血管性認知症を起こし易くさせる要因(危険因子)を管理する必要があります。この危険因子には、高血圧、糖尿病、心房細動、虚血性心疾患、肥満、脂質異常症、喫煙、飲酒、頸動脈狭窄、一過性脳虚血発作などが挙げられています。普段から高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に注意して、禁煙や適度の飲酒を心がけることが、将来の血管性認知症の予防につながります。
血管性認知症でもコリン系の障害が認知機能に影響している場合があります。特にアルツハイマー型認知症の併存が疑われる場合には、ドネぺジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の効果が期待できます。また、血管性認知症では抑うつや意欲・自発性低下、せん妄などの精神症状を伴うことが多いので、抗うつ剤や抗精神病薬などを必要に応じて服薬することで、精神状態が安定して認知機能の改善が見られる場合もあります。

  様々な認知症

地域情報誌「ともも」、No138(2013年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


血管性認知症は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの種々の疾患に伴って起こる認知症です。したがって基盤となる病態によって、生じる認知症の臨床像は異なります(血管性認知症は不均一な病態の集合)。脳梗塞後の血管性認知症を取り上げても、以下のいくつかのタイプに分けられます。‖臟照藜舛魎泙倏召里△舛海舛帽失匹おこる多発梗塞型、大脳白質のラクナ梗塞や動脈硬化性変化による皮質下型、G知機能に直接関係する部分の小梗塞による単一病変型、で樵澗里僚朶追堊粥柄廟幻紊覆鼻砲砲茲訥竈流型、イ修梁勝
 これらの多くに共通して起こる特徴は、脳卒中発作に伴い急に認知機能の障害が生じること、脳卒中の再発によって認知症症状が階段状に進行すること、前頭葉の機能低下による遂行機能(段取り良く物事を行う能力)の障害が目立つこと、夜間せん妄や抑うつ症状などの精神症状が起こりやすいことなどが挙げられます。認知症症状や精神症状の状態が日によって変動することもよく見られます。血管性認知症の診断にはMRIなどの画像診断が役立ちますが、アルツハイマー型認知症(AD)の併存(脳血管病変を有するAD、あるいは混合型認知症)にも注意する必要があります。

  前頭側頭型認知症

地域情報誌「ともも」、No137(2013年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前頭側頭型認知症(FTD)は、各種の認知症のなかでも治療やケアが困難です。根本的な治療薬がないので、興奮に対する鎮静を主体にした対応がなされていることが多いですが、最近になって脱抑制や常同行動などに対して抗うつ剤の一種で強迫性神経障害にも用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果が報告されています。今後さらに薬物治療の可能性が検討されるものと思います。
しかし、現状では薬物治療に限界があるため、非薬物的な対応がより重要です。FTDではアルツハイマー型認知症とは違って記憶が保たれていること、失語・失行・失認といった日常的な動作や行動に影響をおよぼす障害が少ないことが特徴です。さらに、長い時間注意を集中することが困難で、外界からの刺激に影響を受けやすい(他人がとった行動を無意識にすぐにまねる・・)などの特有のパターンが見られます。そこで例えばデイサービスの利用に際して、同じスタッフが毎回一貫したケアを繰り返す、本人の好みに応じた作業内容をいくつか用意して集中力の途切れた場合に新たな内容を提示して興味を途切れさせないようにするなどの工夫が役立つことがあります。FTDでは特に個々の病態に応じた個別性の高いケアが求められえます。

  前頭側頭型認知症

地域情報誌「ともも」、No136(2012年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前頭側頭型認知症(FTD)では特有の精神症状として、自分の行動を抑えることができない「脱抑制」、他人の気持ちを推し量ることのできない「共感の欠如」、一定の行動パターン(毎日同じところに出かける、同じものを食べ続ける・・)を繰り返す「常同行動」、外部からの刺激にすぐ反応してしまう「被影響性の亢進」、自分から考えて物事を解決していく能力が乏しくなる「自発性の低下」などが見られます。そのため周囲からは、わがままで無精になり、まるで人がかわってしまったと感じられます。時には外出先で勝手に物を持ち帰るなどの反社会的行動や興奮が強くなり暴力行為におよぶなどのトラブルを引き起こすこともあります。一方、アルツハイマー型認知症(AD)の特徴の記憶の障害や視空間機能の障害、あるいはレビー小体型認知症(DLB)の特徴の幻視やパーキンソン症状は原則として見られないことも特徴のひとつです。
FTDでは自分の行動に異常を感じないので、自分が病的であるという意識(病識)がありません。万引きや性的行動なども本人は悪気なく行っているので、何度注意されてもあっけらかんとしています。このためFTDの介護者はADやDLBの介護者とは違った苦労や負担が多く疲弊しがちです。FTDの特徴を理解して、個別の対応を心がける必要があります。

  前頭側頭型認知症

地域情報誌「ともも」、No135(2012年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前頭側頭型認知症は、ドイツ人でプラハの大学の精神科教授であったアーノルド・ピックが1900年前後に発表した、前頭葉・側頭葉の限局性の脳萎縮を呈し、特有の言語症状や精神症状を伴った一連の症例の報告から始まります。この大脳前方部に変性をきたし、著明な人格変化や行動障害を主症状とする変性型認知症(ピック病)については、その後長年にわたり研究が行われてきましたが、1980年代後半ころから前頭側頭葉変性症(FTLD)としてまとめられるようになり、その中に今回取り上げる前頭側頭型認知症(FTD)と進行性非流暢性失語(PA)、意味性認知症(SD)の三つの臨床型を含んだものとして理解されるようになりました。最近ではFTDにみられる異常な蛋白質の分析が進んで、その病的変化がさらに細かく調べられています。
 このFTDは比較的若いひとに多くみられ、若年性認知症(65歳未満で発症)では、アルツハイマー型認知症に次いで多いとされています。また、記憶障害よりも精神症状(抑制がとれて興奮しやすい・・)や異常な行動(毎日決まった時間に決まったことを繰り返す、食事の好みが変わる・・)が目立つので、認知症として認識されにくいなどの特有の問題点があります。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No134(2012年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回はレビー小体型認知症に対する治療の基本的な考え方について考えてみます。レビー小体型認知症ではドパミン系、アセチルコリン系、セロトニン系などの様々な神経系が障害を受けます。そのため個々の患者さんによって、認知機能障害、BPSD(認知症の行動・心理症状=幻覚、妄想、うつ症状、無気力、睡眠障害などとそれによる行動症状)、パーキンソン症状、自律神経症状の程度や比重が異なります。したがって患者さんごとに治療の主要な対象となる臨床症状を見定めて、それに応じた対応を考えることが重要です。
一般に認知症の治療には非薬物療法(ケアや環境の整備)と薬物療法がありますが、レビー小体型認知症では非薬物療法の役割がより大切です。社会との交流を促すことで精神症状の改善を図る、生活環境を整えることで転倒などの事故のリスクを軽減する、繊維質の食事を心がけて便通を調整するなどの生活の工夫を考えます。薬物療法には、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルなど)の有効性が検討中であり、症状によっては抗パーキンソン病薬や抗精神病薬、抗うつ剤漢方薬などが用いられますが、薬剤に対する過敏性があるところから細心の注意が必要です。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No133(2012年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


レビー小体型認知症を示唆する重要な症状のひとつにレム期睡眠行動異常症(RBD:REM sleep behavior disorder)があります。RBDは特異な睡眠の異常です。レム期とは寝ているときに夢を見ている時間帯のことで、通常では夢を見ているときは身体の力が抜けていますが、RBDでは夢の内容に応じた身体の動きが起こります。たとえば泥棒が入ってくる夢を見て、それと闘おうとして寝ながら殴ったり蹴ったりして暴れる・・などです。人によっては起き上がったり、走り出したりするなどの激しい動きをする場合もあり,本人のみならず隣で寝ている人まで怪我をする危険もあります。

夜間せん妄やある種のてんかん発作でも同様の状態が起こりえますが、RBDは刺激によってしっかり目覚めさせることができる点がこれらとは異なります。RBDではいったん目が覚めると異常な行動は止まり、夢の内容も思い出すことができます。不思議なことにRBDの90%は男性であるといわれています。レビー小体型認知症ではしばしばRBDを伴いますが、なかには認知症の発症に先立ってRBDのみが続く場合もあります(パーキンソン病や多系統委縮症などの神経疾患の前駆症状の場合もあります)。RBDに対しては睡眠環境の整備とともに適切な薬物治療を考えます。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No132(2012年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


レビー小体型認知症(以下、レビー型)の中心的な特徴の1)幻視、2)症状の変動、3)パーキンソン症状の三つについての説明を続けます。今回は3)です。

3)パーキンソン症状:身体の動きが鈍くてぎこちない、無意識に力が入ってしまい身体が硬い、姿勢のバランスが悪く歩行が不安定・・などのパーキンソン症状が見られます(通常のパーキンソン病でよく見られる手足のふるえは目立ちません)。このためレビー型では進行に伴って転びやすくなるので、転倒に伴う事故(打撲や骨折・・)に要注意です。パーキンソン病に比してレビー型では、これらの症状の進行は早く、抗パーキンソン病薬の使用も難しい(効果が乏しく、精神症状を助長することがある)ので対応に苦慮します。同時に自律神経症状として頑固な便秘、尿失禁(神経因性膀胱)、著明な立ちくらみ(起立性低血圧)なども初期の頃から出現しやすいことが知られています。一過性の意識消失発作もしばしば見られます。レビー型では認知機能の低下が早く(アルツハイマー型認知症より進行が早い)、そのほかにもこのような身体面で機能低下が加わるため、発症後の平均生存期間は10年未満とされており、なかには数年程度で亡くなる場合もあります。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No131(2012年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


レビー小体型認知症(以下、レビー型)の中心的な特徴として、1)幻視、2)症状の変動、3)パーキンソン症状の三つがありますが、今回は2)の説明です。

2)症状の変動:レビー型(特に初期の頃)では日によってあるいは1日のうちでも時間帯によって、頭がはっきりしている状態とボーっとしている状態が入れ替わります。一見穏やかに過ごしているときがあるかと思うと1日中無気力で居眠りばかりだったり、あるいは混乱・興奮で手がつけられなかったり・・と介護者がすっかり振り回されてしまうことも少なくありません。身体機能面でも自分でしっかり歩けるときから手伝ってもらわないと動けないときまで様々です。

このような症状の変動に伴って認知機能検査(HDS-RやMMSEなど)の値が大きく上下するのもレビー型の特徴のひとつです。したがって、家ではしばしば明らかな認知症状態が見られることがあっても、医療機関に行ったとき(→外来に連れて行けるくらいの体調の良い時期)には認知機能はそれほど低下がなく認知症と思われないことがあります。レビー型の診療では、診察室で得られる検査結果以外に、家族からの普段の状況を具体的に教えてもらうことが大変重要になります。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No130(2012年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


レビー小体型認知症(以下、レビー型)の症状や注意点について記していきます。レビー型の診断基準では中心的な特徴として、1)幻視、2)症状の変動、3)パーキンソン症状の三つが挙げられています。

1)幻視:レビー型でもアルツハイマー型認知症と同じように最近の出来事の記憶に障害(いわゆるもの忘れ)が見られますが、そればかりでなく初期のころから幻視(実際には存在してないものが見える)を伴います。レビー型における幻視は非常にリアリティーのあるもので、「そこに女の子が座っている」、「床をネズミが走っている」などと具体的な状況を言い張ります。道にゴミ袋が並んでいるの見て、「人の頭が置いてある」といった恐ろしげなことを言い出すこともあります(このように物を見誤ることを錯視と呼びます)。これらの視覚性の異常(視覚性認知障害)は、本人に頭の中では「現実に見えている」現象です。したがって周囲がいくら否定しても本人は納得しません。まずは本人の訴えを受け入れてあげることが必要です。薄暗くなれば早めに灯りを点ける、余計な物は整理するなどの環境整備も大事です。その上で、幻視によって興奮して本人や周囲に危険がおよぶ恐れがあれば薬物治療も含めた対応を主治医と相談しましょう。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No129(2012年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回にも述べたように、レビー小体は脳神経細胞内に見出された異常構造物で、当初(1912年)はパーキンソン病患者の脳幹部の黒質と呼ばれる部位に見られるものと考えられていました。しかし1970年代半ばより小阪憲司(元、横浜市立大学精神科教授)によって特有の認知症とパーキンソン症状を主症状として、大脳皮質に広範にレビー小体が出現している症例が報告されるようになり、しだいに欧米でもレビー小体と認知症の関連が注目を集めることになりました。1996年に初めてレビー小体型認知症(以下、レビー型)の世界的な診断基準が整備され、2005年にその改訂が行なわれました。

このようにレビー型の認知症はその存在が広く認識されるようになってから20年にもなりません(これに対し、アルツハイマー型認知症は1906年に初めて発表されています)。したがって現在でもレビー型とアルツハイマー型の認知症が混同されたり、そのレビー型の特徴的な症状に対して適切な対応がなされていないケースもあるようです。また家や施設におけるケアにあたってもレビー型はアルツハイマー型とは違った配慮が必要な認知症ですので、その特徴を理解していることは重要です。次回から具体的な症状や注意点などについて解説します。

  レビー小体型認知症

地域情報誌「ともも」、No128(2012年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


これから数回にわたってレビー小体型認知症(以下、レビー型と略します)について解説します。レビー型は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症とならんで三大認知症のひとつです。特に高齢者では認知症の約2割を占めるとされる重要な疾患です。このレビー型は日本の小阪憲司先生(現、横浜ほうゆう病院院長)が精力的に研究して、比較的最近(1990年代以降)になって世界的にも知られるようになった「日本発」の疾患でもあります。

レビー小体とは、ドイツのレビー(Lewy)先生によって初めてパーキンソン病患者の脳幹部の神経細胞のなかに見出された異常構造物です。現在ではその主要な構成成分はアルファ‐シヌクレイン(α‐synuclein)という蛋白質であることが判明しています。このレビー小体が大脳皮質に広範囲に出現して、記憶障害などの認知症状のほかに特有の幻視(実際にはない人や物がありありと見える)やパーキンソン症状(身体がこわばって動作が鈍くなり、転びやすくなるなど)をきたす病気がレビー型です。ほかにも心身の症状の変動が大きい(1日のうちでもはっきりしている時とボーっとしている時の差が大きい)、自律神経症状(立ちくらみや排尿・排便の障害など)が目立つ、抗不安薬や抗精神病薬などに過剰に反応しやすいなど、アルツハイマー型認知症とは違った特徴を持ちます。

  軽度認知障害

地域情報誌「ともも」、No127(2012年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


軽度認知障害(MCI)の最終回です。現在、日本を含む世界的な規模のアルツハイマー型認知症(AD)の観察研究(World Wide AD Neuroimaging Initiative:WW-ADNI)が行なわれています。これは健常者、MCI患者、AD患者の3つのグループに対しPETやMRIなどの画像診断、脳脊髄液検査などを経時的に行い、認知症の進行経過(症状出現前の時点も含めて)に沿った脳の変化を調べる研究です。認知症の発症予測や病態の進行を客観的に判定できるマーカーを探し出すことを目的としています。

これによると、MCIの中でもアミロイドβ蛋白と言う異常な蛋白質の蓄積がある場合はADへの移行率が高いことが分かりました。すなわち多彩な背景因子、基礎疾患を持つMCIの中からADの予備軍を抽出する可能性が出てきています(まだ実用段階ではないですが・・)。さらに最近ではMCIの前の段階から将来のMCIやADへの進展するグループの特徴をとらえようとする研究も行なわれています。

今のところアルツハイマー型認知症の治療薬は認知症症状を抑える作用(症状改善薬)にとどまりますが、このような研究を通じてより根本的に病気の発症や進行に作用する薬(根本治療薬)の開発が期待されます。

  軽度認知障害

地域情報誌「ともも」、No126(2012年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


軽度認知障害(MCI)の多くは記憶の障害、特に直近のエピソードを忘れていることで気づかれます。これも本人がもの忘れを自覚する場合からあまり気にしていない場合まで様々です。一般にもの忘れの自覚がないひとの方が、将来的にアルツハイマー型認知症に移行しやすいようです(アルツハイマー型認知症のハイリスク群)。また自分の身の回りのこと(基本的ADL)はできていても、事務作業や家事一般など(手段的ADL)にはそれなりの困難があり約半数は一定の介助を必要とします。この場合も手段的ADLの障害が強いものほど認知症への移行する可能性が高いとされています。さらに米国の報告ではMCIの半数弱になんらかの精神症状を伴うとされており、その半分がうつ、半分弱が無気力(アパシー)でした。うつを伴うMCIの場合も認知症への移行の可能性に注意が必要です。

認知機能の評価法として一般によく用いられているものに、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)などがありますが、東京医大の羽生によれば「1分間にできるだけ多くの‘動物の名前‘を挙げる」という簡便な方法で認知症やMCIの目安をつけることができるそうです。それによると健常老人では1分間に13から14個以上の回答は可能とのことです。

  軽度認知障害

地域情報誌「ともも」、No125(2012年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)とは、知的機能の低下があるものの、認知症というまで顕著ではない状態を言います。最近ではアルツハイマー型認知症の前駆段階との関連で注目されている概念です。具体的には、本人や家族から認知機能低下の訴えがあり、認知機能は正常とは言えないが認知症の診断基準も満たさない状態で、基本的な日常生活機能は正常であるの3点が基本になります。認知機能の低下は記憶の障害(もの忘れ)が主体ですが、その他の認知機能(言語や遂行機能、視空間機能)の障害を伴う場合もあります。

各種の調査から、一見正常と思われる65歳以上の地域住民の約5%はこの軽度認知障害に相当すると考えられています。そして、これらの軽度認知障害のひとたちの中から年間10%程度が認知症に進展すると報告されています。特に記憶障害がより目立つタイプはアルツハイマー型認知症に移行しやすいとされています。一方で、長期に経過を追っても最終的に認知症に至らないひとや認知機能が回復するひとがいることも知られています。すなわち、軽度認知障害は色々な背景因子や基礎疾患を持ったひとたちが含まれているので、その将来的な変化は様々といえます。現在、事前にその変化を予測する方法の研究開発が進められています。

  認知症 休憩編

地域情報誌「ともも」、No124(2011年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


最近、認知症と糖尿病の関連が注目されています。糖尿病では、腎臓(腎症)や目(網膜症)、末梢神経系(末梢神経障害)などの合併症が知られていますが、数年前から認知症(糖尿病性認知症)の合併も多いことが報告されるようになっています。日本や欧米のデータでは、糖尿病は血管性認知症やアルツハイマー型認知症の発症危険度を約2倍高めるとされています。特に、ヘモグロビンA1C高値、15年以上の長期罹病、インスリン治療、蛋白尿などの人では要注意です。糖尿病性認知症の原因には、脳血管系の動脈硬化で脳卒中のリスクが増すこと、高血糖による脳神経系への悪影響(糖毒性)、薬の効きすぎのための低血糖による作用などの複合的な要素が挙げられています。

糖尿病は体内のインスリン不足で発症します。近年の研究ではこの血糖を下げるホルモンであるインスリンは、脳内で海馬における記憶の形成に重要な役割を果たしていることが判明し、またアルツハイマー型認知症の発症に関係するアミロイドβ蛋白やタウ蛋白の代謝にも関係していることが分かってきました。このような脳内のインスリン作用の低下も認知症の発症要因として関心が持たれています。いずれにしても糖尿病では適切な治療で血糖値をコントロールすることが重要です。

  認知症 休憩編

地域情報誌「ともも」、No121(2011年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回はレーガン元大統領と認知症のお話しです。ロナルド・レーガン(1911-2004)は第40代のアメリカ大統領です。1981年から1989年まで在任し、積極的財政政策で当時のアメリカに長期にわたる好景気をもたらしました。同年代の各国の指導者としては日本の中曽根首相、イギリスのマーガレット・サッチャー首相、ソ連のゴルバチョフ書記長などがいます。

レーガンは77歳のアメリカ史上最年長で大統領の座をジョージ・ブッシュに譲り引退しています。そしてその3年後の1992年にアルツハイマー病と診断されました。症状はしだいに進行し、1994年に国民に向けた書簡で自らの病気を公表しました。最後のメッセージとなった「私は今、私の人生のたそがれに至る旅に出かけます」という言葉は、多くの人に深い感銘を与えました。2001年に転倒し腰椎を骨折してからは寝たきり状態になり、自宅で療養を続けていましたが2004年に93歳で肺炎で亡くなりました。当時は歴代の大統領のなかで最長寿でした(現在はフォード元大統領に次ぐ第2位)。
レーガンの認知症症状がいつから始まっていたかは諸説がありますが、次男のロンによると大統領在任中からすでにその兆候が見られていたとのことです。なお、同世代の指導者のマーガレット・サッチャーも認知症で現在療養中だそうです。

  認知症 休憩編

地域情報誌「ともも」、No120(2011年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回はちょっと休憩で、アルツハイマー型認知症の名称の由来になったアルツハイマーに関するお話しです。アロイス・アルツハイマーはドイツの精神科医です(1864年-1915年)。フランクフルト市立精神病院などを経て、ドイツ精神医学の重鎮であるエミール・クレペリンのもとでミュンヘン大学で診療や研究、教育に従事しました。同時期のミュンヘン大学には「レビー小体」にその名を残すフレドリック・レビーも在籍していました。

アルツハイマーは1901年に診察したアウグステ・データーという女性患者について1906年に南西ドイツ精神医学会で報告し、これが後に「アルツハイマー病」として広く世界的に認識されるきっかけになりました。アウグステは51歳の頃に嫉妬妄想が始まりました。しだいに記憶の障害や失見当識が加わり、せん妄状態をきたすなど認知症症状が進行しました。さらに失語や失行などの高次脳機能障害を生じて寝たきりになり4年半後に亡くなっています。アルツハイマーは脳の病理学的変化を見て、これまでに知られていない新たな疾患として発表しました。そしてこの疾患はクレペリンによって1910年に「アルツハイマー病」と命名されました。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No118(2011年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


介護者が人に相談できずに困ってしまう現象として認知症に伴う性的行動があります。身体をさわったり、抱きついたり、性的な言動を口にするなど、認知症の患者さんのなかには家族や介護スタッフを問わず異性に対して性的な行動をとることがあります。前頭葉の働きが低下して自制することができなくなったときやその場の環境や人間関係に不安があって混乱したときに、このような行動が起きやすいようです。その人の行動が生じた背景を考える必要があります。

このような性的行動に対してあまり厳しく叱ったり、鋭く拒絶するとご本人の自尊心を傷つけることになり、かえって気持ちが高ぶってしまうことがあります。過度に深刻なそぶりを見せず、手を握ってあげたり大きなぬいぐるみを一緒に持つなどして、気をそらせるような方法が役立つことがあります。普段からの適度なスキンシップにより信頼感や安心感が増すと、気持ちが安定することが期待できます。
性的行動に関しても問題を介護者がひとりで抱え込まず、他の日常生活での行為と同様に、どう対応していくか家族や介護スタッフと話し合うようにしましょう。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No117(2011年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症の人のなかには、以前は穏やかな性格だったのに人が変わったように怒りっぽくなって攻撃的になることがあります。このような性格変化の背景には、自分の感情をコントロールできない、自分の思いを上手く表現できないなど、自分自身に対するもどかしさやふがいなさ、不安などの思いがあります。このような時に介護者が平静を失って感情的に対応すると、本人の攻撃性がより増してしまう恐れがあります。また介護者に不安や恐怖の気持ちがありすぎても、本人の興奮性をかえって高めてしまうことがあります。
対応が難しいと感じた場合には無理にケアすることにこだわらず、目先の話題を変えてほかに関心を向ける、その場を離れて時間をおき興奮のきっかけを忘れるのを待つ、ケアサービスを利用して家族以外の人の力を借りるなどの方策を考えましょう。不安を感じさせない生活環境や日常の体調管理(例えば便秘が続いても気分が不安定になることがあります)にも注意してあげてください。あまりに興奮が強く、自分を傷つけたり家族に危害がおよぶような場合には、気分を落ち着かせる薬などを考える必要もあります。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No116(2011年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症のひとによく見られる現象の解説を続けます。「徘徊」とは、一般にはあてもなくぶらぶらと歩き回ることを指しますが、認知症(特にアルツハイマー型認知症)のひとではなんらかの理由で出かけたものの結果的にもとに戻れなくなったという場合が少なくありません。例えば空腹になりパンを買いに出かけたとしても、お店までの道順を忘れてたどり着けず、そのうちにパンを買いに出かけたことも忘れてしまい、家への帰り道も迷ってしまう・・といった状態です。後で本人に問いただしてもこのような経緯を説明することはできないので、周囲は事情が分からず「勝手に出歩いていた」と誤解されていることがあるかもしれません。本人の行動パターンをよく観察して、「なにか探し物がある」、「退屈している」、「イライラしている」などの本人の気持ちを推察し、それに応じて対応を考えます。
 一方、毎日同じ時間に同じコースを道に迷うことなく延々と歩いてまた帰ってくるという場合があります。これは「周徊」と呼ばれる現象で、「前頭側頭型認知症」でしばしば見られる常同行動の一種です。この場合は途中で信号無視や万引きなど触法行為を繰り返して、その扱いに苦慮することがあります。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No115(2011年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は幻覚についてです。実際には何もないところでも「そこに子供がいる」、「虫が這っている」、「話し声が聞こえる」などと言い出すことがあります。このような現象は知覚認知の異常といわれる状態で、一般に「幻覚」と呼ばれます。そのなかでも、ない物が見える「幻視」は認知症でしばしば経験します。特に「レビー小体型認知症」においては非常に現実感のある幻視が特徴的で、その80%以上に認められるとされています。これに対してアルツハイマー型認知症の幻視は20%程度と報告されています。幻視の背景には、せん妄などの意識レベル低下、視覚失認で対象の認識が困難、薄暗くなって明暗がつきにくい、など様々な要因が関与しています個々のケースで幻視が生じた原因を考えることが重要です。
 いずれにしても幻視は本人にとっては実際に感じていることですから、頭ごなしに否定しても納得は得られません。不安感を持っている場合には「私が一緒にいるから大丈夫」などと安心させる必要があります。本人が幻視を受け入れている場合には、特別な対応することなく受容的に見守ってあげることも良いでしょう。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No114(2011年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回の「妄想」の続きです。認知症の特徴的な妄想を列挙してみます。

家に居るのに「ここは自分の家ではない」と言い出すことがあります。それが高じると実際に自宅から出て行ってしまい「徘徊」に結びつくこともあります。これは自宅を忘れてしまったり、自宅を認識できなくなった(誤認)ためと考えられます。

「身近な人(配偶者や介護者など)が他人と入れ替わった替え玉だ」と訴えることもあります。これは人物誤認のひとつで、昔から「カプグラ症候群」と呼ばれています。対象となった人にとっては介護の意欲が著しくそがれます。これも本人に対する説得は効果はなく、かえって本人を興奮させることになりかねません。人物誤認には、鏡に映った自分が他人と思いこむ「鏡徴候」や特定の迫害者が多くの人に変装して自分に迫ってくるという「フレゴリの錯覚」などがあります。

また、配偶者が不貞をしていると思い込む「嫉妬妄想」もよくみられる妄想のひとつです。
いずれの妄想も、本人の知的な能力の喪失に対する自己防衛的な行動の現われとも理解できます。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No113(2010年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


「妄想」とは、独自の考えに取り付かれて、周囲から訂正されても受け入れない状態を指します。アルツハイマー型認知症の患者さんでは、「物を盗られた」と言い出すことがよくあり、これは「物取られ妄想」と呼ばれます。特に「お金」や「貯金通帳」、「印鑑」などの金銭関係が多いようです。もともとは自分が大事にしまっていたのですが、そのありかを忘れてしまったために「誰かに盗られたためになくなった」という考えが浮かんできたものと推察されます。このためにいちばん身近にいる介護者やヘルパーさんに、あらぬ疑いがかかることもあります。
 本人に対しては、「置き忘れたのでしょ!」などと責めないことが大切です。疑いがかけられた人も感情的にならないことが必要です。いっしょに探してあげて、本人への共感や同情の気持ちを伝えましょう。探し物の場所がわかっている場合は、本人を上手く誘導して自分で見つけられるようにしてみてください。普段から、物のしまい方などの本人の行動パターンをよく観察しておくことも大事です。妄想にはこれ以外にもさまざまなものがあります。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No112(2010年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症では高次脳機能障害のひとつとして失語症をきたすことがあります。失語とは言葉の意味が分からなくなったり、適切な言葉が思い浮かばなくなってスムーズな会話が成り立たない状態です。言葉を聴いたり話したりするだけでなく、文字を書いたり読んだりする力も低下します。まるで言葉の通じない国にいるような状況と想像されます。

まずは本人のペースに合わせて、ゆっくり話をするようにしましょう。言葉の意味が分かりにくそうな場合は、他のことばに言い換えてみてください。言葉が出にくい場合は、本人が言いたい言葉を予想してたずねてみます。
言葉の能力も使わなければ、その機能はより低下します。上手く会話ができなくても、積極的に本人と話す機会を持ちましょう。好きな本を読んできかせたり、簡単な文章を書いてもらうなど、言葉に触れる時間を持つように心がけることが必要です。本人が話している内容がわかりにくくても、しっかり聞いてあげて本人の気持ちを大切にしてあげてください。

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No111(2010年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症の人は物事を判断する力が落ちてきます。例えば、買い物のときに細かいお金の支払いが困難(小銭を計算できない)になり小額の買い物でもそのつどお札で支払うようになったり、テレビや電子レンジなどの家電製品が上手く使えなくなったりします。頼まれたことができず失敗した時に、取り繕おうとしてかえってトラブルを招くこともあります。
このような判断力の低下に対して、失敗を怒ったり責任を追及することは禁物です。まずは本人の努力を評価して安心感を与えるようにしましょう。そして本人が今できることとできないことの範囲を見分けて、本人のできることは簡単なことでも続けてしてもらい本人の自信につながるように工夫しましょう。用事を頼むときは本人のペースに合わせてゆっくり分かりやすく話しかけてあげてください。また、若い頃に身についたことはなかなか忘れません。本人のこれまでの趣味や仕事に結びつくようなことがらを見つけて、日々の暮らしの中に取り入れることを考えてみてはいかがでしょうか?
    

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No110(2010年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


時間や場所の見当がつかなくなる(見当識障害)と、家にいるのに「家に帰る」と言い出したり、既に退職しているのに「会社に行く」と言い出すことがあります。このような時でも頭ごなしに否定することは避けましょう。「今日は日曜日なので明日にしましょう」、「もう遅い時間なので、明日にしましょう」などと話しかけてみたり、一緒に近所を少し散歩して気分を切り替えるようにしてみてください。
さらに見当識障害がすすむと人物の判断が混乱すること(人物誤認)も起こります。長年一緒に暮らしている家族の顔を忘れてしまったり、別人(その人の兄弟や子供など)と間違って認識することがあります。この場合でも強く否定しないで受け入れる姿勢が必要です。他人と誤認して興奮するようになれば、その場を一旦離れ仕切りなおすなどの工夫をしましょう。なかには配偶者などの親しい人物がいつの間にか瓜二つの替え玉に置き換わったという妄想を抱くことがあります(カプグラ症候群)。これは親密さの感情が鈍磨して、その人に対する記憶との解離が生じるためと考えられます。     

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No109(2010年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


前回のもの忘れの続きです。食事をしたことを忘れて食事をせがまれたり何回も同じことを質問されたときは、本人のもの忘れを利用して対応することを考えましょう。食事をせがまれたときは、「いま用意しているから待ってて」などといって待ってもらっているうちに忘れてもらうのもひとつの方法です。日頃から本人の好物(お菓子や果物など)を少し用意しておいて「すぐにできるから、それまでこれで我慢して」と機嫌をとったり、テレビをつけて目先の話題を変えるなどで別の事柄に関心を向けるようにしてみましょう。タイミングをみてその場を他の人に替わってもらうなども良いでしょう。
記憶の障害に関連して時間や場所の見当がつかなくなること(見当識障害)もよくあることです。自分のおかれている状況が分からなくなると不安になるため、「今日は何日」と何回も確かめるようになります。大き目の日めくりカレンダーを掛けたり、季節がわかるような飾りを置いて、一緒に確認するようにしましょう。     

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No108(2010年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


これからは認知症(なかでもアルツハイマー型認知症を前提として)の特徴的な症状とその対応について数回に分けて考えてみます。まず始めは「もの忘れ」です。加齢とともによく見られる健常者のもの忘れ(良性の健忘)では、例えば昨日の食事の内容を思い出せないことがあっても、食事をしたこと自体を忘れることありません。また食事の内容についてもヒントがあれば思い出すこともできます。認知症のもの忘れ(悪性の健忘)では、食事をしたこと自体を「すっかり忘れて」います。すなわち、健常者のもの忘れでは体験の一部を忘れることに限られますが、認知症のもの忘れでは体験の全体がすっぽり抜け落ちているところが特徴です。そのため食後間もなく、「ご飯はまだか?」などと言うことになります。ひとによっては同じことを何回も繰り返して質問して、介護者を疲れさせることもあります。このようなときに「さっき食べたでしょ」、「何回言ったら分かるの」と言って事実を突きつけて争ってもらちが明きません。かえって反感を持ったり、被害妄想的な感情を抱くことになりかねません。     

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No107(2010年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症のひとが暮らしていく上で、日常生活の質を高める工夫を考えてみましょう(長谷川和夫:アルツハイマー病 ケアハンドブック、一部改変)。仝慣れたもの、使い慣れたものを身近におく:なるべく本人の気持ちが落ち着く慣れた道具を利用しましょう。部屋の模様替えや新しい道具の買い替えはひかえる:合理的な生活環境も大事ですが、これまでの慣れた環境を変えると混乱することがあります。新しい電化製品も便利ですが、本人が使いこなせないことがあります。F時や場所がすぐわかるようにする:日めくりや季節の花・果物などを置いて日時や季節を感じさせたり、部屋の戸に目印をつけて外からわかるようにしたりして混乱することを少なくさせましょう。夜はトイレや階段に灯りをつけておくと安全です。っ詭襪龍菠未鬚呂辰りつける:昼夜が逆転しないように、メリハリのついた生活リズムをつけましょう。タ事や水分摂取に注意:特に独居のひとは偏った食事になったり水分不足になったりしがちです。栄養不足や脱水症にならないように気をつけましょう。     

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No106(2010年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症のひとに接するときには次のような事項に配慮すると良いでしょう(永田久美子:アルツハイマー病 ケアの要点、一部改変)。〜蠎蠅亮尊心を傷つけない:間違った行動や理解できない行動をとっても否定しない。∩蠎蠅了詭遒貌って話す:後ろか急に話しかけと振り向きざまに転倒することがあります。ゆっくり、楽しく:本人のスピードに合わせて話しかけたり、促したりします。ご蕎陲貌きかける:言葉だけでなく、しぐさや眼差し、態度などで相手の感情面に働きかけます。ゴ雰蕕謀舛┐襦物事を伝えるときは一度にいくつもの内容を語らず、順を追って話をしましょう。Δ錣る言葉を使う:相手の育った歴史や環境に応じた、慣れ親しんだ話し方を考えましょう。話を合わせる:現実にはあり得ないような内容でも、否定したり訂正したりしないようにしましょう。╂力辰鯤垢:相手の最も楽しかった時期の話を聞いてみましょう。当時の写真や絵などがあれば思い出話のきっかけになります。現実を知ってもらう:具体的な名前や日時、場所を折にふれ会話にはさんで見当をつけるようにしましょう。     

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No105(2010年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症のひとは、情報を処理する能力がゆっくりになっています。過去の記憶に照らし合わせて判断したり、一度にいくつものことを考えたり、新しい事柄を取り入れたりすることが苦手です。したがって、認知症のケアの基本原則は、 屬罎辰り、楽しく」、◆崋由に、ありのままに」、「‘してあげるケア‘から‘いっしょに過ごすケア‘へ」、ぁ峪弔気譴仁呂琶襪蕕靴隆遒咾伴信を」、ァ屬覆犬鵑栖超のもの・ことを大切に」、Α崔楼茲篌然とふれあいながら」などがキーワードとして挙げられます(永田久美子:アルツハイマー病ケアの要点)。

認知症のひとにとっては、そのひとらしいペースで日常生活を過ごせることや活動の場が確保されることが重要です。そのためには介護者は接し方や環境づくりに配慮し、暮らしの基本である「食事」や「排泄」を充実したものにすること、危険の防止に注意すること、周辺症状に適切に対処することなどが大切になります。また、介護は長期におよぶので介護者が疲れすぎないような工夫も必要です。
    

  認知症の理解のために

地域情報誌「ともも」、No104(2010年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回から認知症患者さん(主にアルツハイマー型認知症を対象とします)のいろいろな症状を取り上げて、具体的な接し方のヒントを考えます。

認知症の症状は、中心となる認知機能の低下(中核症状:記憶障害、実行機能障害=目的に応じた適切な行動ができない、失語、失認など)とそれに伴って周囲の環境とのあつれきなどで引き起こされる種々の状況(周辺症状:妄想、幻覚、徘徊、せん妄、性的行動、異食など)に分けて考えられます。中核症状は病気の本質的な症状なので、経過とともに進行していきます。周辺症状は介護の仕方や本人の体調などに影響されるので、認知症の程度とは関係なく出現したり、改善したりします。

認知症のひとは、現実の世界を上手く把握できず、まるで見知らぬ世界に迷い込んだかのような状況におちいっていると考えられます。心の中に常に不安を持ちながら、残された力を精一杯ふりしぼって毎日を生きています。介護者はこのような気持ちをまず理解して接しましょう。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No102(2010年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


認知症と間違われやすいものとして、うつ病とせん妄があります。また、比較的軽度の認知症患者にこれらが加わったために、急に認知症が悪化したと誤解されることもあります。

高齢者ではうつ病の場合でも、気分が落ち込むというより、身体的な不調の症状(頭がモヤモヤする、手足がしびれる・・)を訴えることが少なくありません。不安感や焦燥感が強い場合でも外見上はあまりイライラとした感じがなく、落ち着いて見えることもあります。そのためになかなかうつ病と判明せず、適切な医療が受けられないことがあるので要注意です。

せん妄とは軽度の意識レベルの障害によって頭の中が混乱して認知機能が低下した状態です。この場合、認知症の症状が時間単位で変動することが特徴です。せん妄は急な入院などの突然の環境の変化だけで起こることもありますし、脱水症や発熱、下痢などの軽度の身体的異常でも起こることがあります。睡眠導入剤や抗うつ剤などの薬がきっかけになることもあります。急激に発症したように見える「認知症様症状」は常にせん妄ではないかと疑うことが重要です。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No101(2009年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


これまで認知症をきたす主な疾患として、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症について解説しました。これらは残念ながら現在の医学では治すことのできない病気ですが、認知症のなかには原因となる疾患を治して認知機能を改善させることが期待できる次のような病気もあります。

慢性硬膜下血腫は、軽く頭を打った後に頭蓋骨と脳の間に血液がじわじわと溜まり、しだいに脳が圧迫されて認知機能の低下や麻痺症状が出る疾患です。これは頭蓋骨に穴を開けて溜まった血液を抜くことで脳の働きが回復します。正常圧水頭症は、脳の中を流れている脳脊髄液が停滞するために脳の機能が低下して認知症や歩行の障害、尿失禁などをきたす疾患です。これは脳脊髄液を脳の外に流すチューブを入れることで良くなります。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下するために動作が鈍くなり認知症様の症状をきたす疾患です。これは甲状腺ホルモンの薬を服用することで元気が戻ります。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No100(2009年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は脳血管性認知症の話です。これは脳卒中の結果として起こる認知症を指します。すなわち脳血管が詰まったり(脳梗塞)、破れて出血(脳出血、くも膜下出血)したために脳組織に影響がおよんで、認知機能に障害が生じたものです。脳梗塞でいえば、広い範囲に梗塞が起こった場合(広範梗塞型)、いくつもの小さな梗塞が重なった場合(多発小梗塞型)、記憶に重要な内側視床や海馬などの特定の部分にピンポイントで梗塞が起こった場合(限局性梗塞型)などのいくつかのタイプがあります。

いずれにしても脳卒中の一環として起こるので、ある日急に症状が出る、手足の麻痺や呂律の障害などの神経症状が次第に積み重なると同時に認知機能も悪化していく、基礎疾患として糖尿病や高血圧などを有するなどの特徴があります。運動機能の麻痺や会話・嚥下機能の障害などに対するリハビリテーション、脳卒中の再発予防、基礎疾患の治療などの対応が重要です。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No99(2009年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回は前頭側頭型認知症の話です。これは文字通り前頭葉や側頭葉に特異的に萎縮をきたす疾患で、以前はピック病とも言われていました。アルツハイマー型認知症よりもやや若い世代にみられることが多く、物忘れなどの症状よりも人格が変化して反社会的行動をとるなどの精神症状が前面に出るところが特徴的です。自己中心的になり以前には考えられなかったような社会的逸脱行為(ひとの物を勝手にもって変える、ゴミをあちこちに捨てる・・)をしたり、むやみに攻撃的・反抗的な態度をとるようになります。これは物事を考える前頭葉を中心に病変が起こるための病的な症状の一環であり、本人が何かを意図して行った結果ではありません。また、常同行動といって毎日同じ行動パターンをとる(いつもの時間にいつもの同じ行動をとる、散歩に行ってもきまった道を歩き回る、毎日同じものを食べる・・)ことも特徴のひとつです。このような「悪ふざけ」のような行いが目立つために、周囲からは認知症とは思われないまま日々を過ごしている場合もあります。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No98(2009年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


レビー小体型認知症の続きです。レビー小体型認知症では前回述べたように幻視や日々の症状の変動、薬に対する過敏性、早くからのパーキンソン症状の合併などがアルツハイマー型認知症とは異なる点です。特に幻視は生々しく現実感がある(はっきりと人や動物、虫が見える・・)のが特徴で、本人にとっては「紛れもない事実」と認識されます。1日に何回も同じような幻視や妄想を訴えるので介護者にとって精神的な負担になります。また認知症症状の変動が大きいので第3者に本来の状態がなかなか理解されないことがあります。要介護認定を受けるときには日々の状況を良く効いてもらう必要があります。

レビー小体型認知症でもアルツハイマー型認知症と同様に脳内のアセチルコリン濃度が低下しています。したがって薬としては塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)の効果が期待できます。ただし現在のところ塩酸ドネペジルはアルツハイマー型認知症の治療薬として認可を受けている薬なので、実際の使用の可否は主治医との相談が必要です。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No97(2009年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人


今回からアルツハイマー型認知症以外の特徴的な認知症である、レビー小体認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などを順に取り上げます。



レビー小体認知症は一般にはあまり知られていませんが、認知症をきたす変性疾患の中ではアルツハイマー型認知症に次いで多い病気です。脳神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常な構造物が出現しますが、その原因はまだ分かっていません。記憶障害は比較的軽度で、頭部MRI検査でも記憶に関係する海馬と呼ばれる部分の萎縮はあまり目立ちません。それに対して「いないはずの人が見える・・」などの視覚に関する異常(幻視)や妄想などの精神症状を呈することが多いのでケアにあたる際に注意が必要です。ほかにも注意力や認知機能の変動が大きく、日によって(あるいは1日のうちでも)状態が大きく異なること、薬(安定剤、睡眠導入剤など)に対して反応が過敏(副作用が出やすい)なこと、認知症症状に前後してパーキンソン症状がみられること(抗パーキンソン病薬が有効)などが知られています。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No96(2009年7月号)掲載

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アルツハイマー型認知症は進行性の認知機能の低下をきたす疾患ですが、経過とともに失語・失行・失認などの高次脳機能障害をきたすとともに、運動麻痺や感覚障害、パーキンソン症状などの多様な神経症状を呈するようになります。さらに重度になるとけいれん発作や不随意運動などもみられるようになり、意思の疎通もできなくなっていきます。そして嚥下障害から栄養不良や肺炎、寝たきりのために褥創などの合併症を生じて亡くなるケースがみられます。最近のデータでも発症から約半数の患者さんが寝たきりになるまでは5年前後、死亡までの平均罹病期間は8年から10年とされています。
更衣や食事、排泄、入浴などのセルフケアができなくなり、次いで立ったり座ったりなどの基本的な運動能力にも支障が出るようになると、介護家族の身体的な負担もたいへん大きなものになります。この間、介護家族の心理も複雑です。当初は「とまどい」や「混乱」がありますが、「あきらめ」の時期を経て、最終的に本人のあるがままの姿を受け入れられる「受容」ができるかが重要なポイントになります。
    

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No95(2009年6月号)掲載

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アルツハイマー型認知症の方への対応の続きです。記憶力と判断力が低下しているので、一度にあれこれと問いかけたり指示することは禁物です。本人が一度に処理できる範囲内で、順番に話を進めるようにしましょう。何回も同じことを聞き返してくるときは、根気良く応答しながらタイミングをみてほかの介護者にバトンタッチしたり、別の話題に誘導することを試みましょう。理解不能なこと(財布を取られた、死んだ人が居る・・)を言い出しても、頭ごなしに否定せず、まずは本人の訴えを聞くという態度が必要です。自尊心を傷つけないように配慮しましょう。介護サービスの利用を嫌がる場合に、家族以外(例えば主治医)からの働きかけでスムーズにはなしがすすむことがあります。妄想や幻覚のためにあまりに攻撃性が強い場合には、一定期間の施設入所でかえって落ち着くこともあります。アルツハイマー型認知症は進行性の脳神経の病気ですので、経過によってこのような精神状態にも徐々に変化(興奮⇔抑制)が起こり、最終的には運動機能や身体機能も低下していきます。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No94(2009年5月号)掲載

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今回と次回はアルツハイマー型認知症の方への対応について述べます。「認知症をめぐってァ廚任盖したように、認知症の症状には、『中核症状』と『周辺症状』とがあります。前者は記憶障害、判断力低下から成るもので病気の進行とともに悪化します。後者は、「頭の中が空回り」して起こる不安、焦燥、興奮、妄想、幻覚など、そして逆に「頭が働かなく」て起こる抑うつ、意欲減退などがあります。『周辺症状』は生活環境や介護の方法による影響を受けるために、病気の進行とは関係なくみられたり、消えたりします。生活環境への配慮としては、本人が使い慣れた家具や道具を大切にして、安易に部屋の模様替えや新商品への入れ替えをすることを避けましょう。家の中で迷わないように要所に目印をおいたり、夜は一定の灯りをつけたままにします。昼夜の区別は厳密にして昼間を無為に過ごさないようにすること、同じものばかり食べずにバランスの良い食事を摂ること、脱水症状にならないように適時の水分摂取を欠かさないことなどにも注意したいものです。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No93(2009年4月号)掲載

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前回は軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の特徴を述べました。さらに病状が進展すると、日常の生活でもいろいろな支障が出てきます。家族の顔がわからなくなる、家の中でも迷ってしまう、服の着方が分からない、お風呂で身体を洗うことができない、排泄に失敗するなどの問題が起こり、介護が必要になります。やがて足元がおぼつかなくなり階段の上り下りが難しくなる、会話も乏しくなり意思の疎通が困難になる、食事の際にむせて食べたがらなくなるなどで、徐々に寝たきり状態となっていきます。この間、脳には特有の病理学的変化(老人斑や神経原線維変化)が起こり、神経細胞が次々に脱落・消失していくために著明な脳萎縮が起こります。個々によって進行のスピードは異なりますが、5〜10年程度で肺炎などの合併症により亡くなるのが一般的な経過です。アルツハイマー型認知症は年をとって以前より物忘れが目立ってきただけのものではなく、特徴的な神経細胞の病的変化をもとに生じる進行性の広範な脳の病気(神経変性疾患)としてとらえる必要があります。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No92(2009年3月号)掲載

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引き続きアルツハイマー型認知症の解説です。本症では、物忘れ(ヒントを与えても思い出せない悪性の物忘れ)、日時の混乱(日付がわからない)、イライラとして起こりっぽくなる、自発性や意欲の低下などが見られます。しだいに外出したがらなくなり、家のなかでゴロゴロとしていることが多くなります。趣味や稽古事にも関心がなくなり、家族が声をかけても怒り出すようになるといった変化が出てきます。さらに症状がすすむと、やたらにタンスを開けたり閉めたりする、服を着たり脱いだりするなどの無意味な行動をしたり、同じものを大量に買い込む、財布を下駄箱に入れるなどの不適切なふるまいをするようになります。ほかにも、何回も時間の確認をしながら予定の時間に遅れる、料理をしても同じものしか作らず味付けが変わる、物をなくしても他人のせいにするようにもなり、日常生活を続けることが難しくなってきます。ただし、一般に「物忘れのほかには身体は元気」なことが多く、手足のしびれや歩行の障害などの「首から下の症状」を伴う場合には、認知症症状を伴う他の疾患を疑う必要があります。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No91(2009年2月号)掲載

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この認知症のシリーズの冒頭にも記したように、ひとくちに認知症と言っても種々の疾患が含まれています。一般に認知症の患者さんのなかの約半数はアルツハイマー型認知症、3割が脳血管性認知症、1割がレビー小体型認知症、残りの1割がその他のタイプの認知症とされています。まず、アルツハイマー型認知症について解説します。この病気の歴史は古く、1906年にドイツの医師アルツハイマーが嫉妬妄想から進行性の認知症をきたした初老期の患者さんのケースを発表したことに始まります。この患者さんでは脳に特有の病理学的な変化(老人斑と神経原線維変化)がみられ、従来知られていなかった病気として報告されました。その後多くの研究者たちの努力でこの病気の解明が進み、現在も世界中で診断や治療の開発が行なわれています。その成果のひとつとして、1999年から日本でも塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)という治療薬が使われるようになりました。現在欧米ではほかに二剤の治療薬が用いられており、今後日本でも薬の選択肢が増えていくと思われます。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No90(2009年1月号)掲載

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今回からは認知症の診療の実際について解説していきます。認知症の患者さんは一般に物忘れに気づかれて受診されます。しかし、物忘れの人がすべて認知症とは限りません。正常の老化の範疇の物忘れ(良性の健忘)もありますし、認知症以外の病気に伴う認知症様症状の人も含まれます。なかには「治療可能な認知症」と呼ばれるいくつかの病気もあるので要注意です。ある「物忘れ外来」では、物忘れを心配して来院した1000名余りの受診者のうちで70名(6.8%)がこのような「治療可能な認知症」あるいは「認知症と類似した病態」と診断されています(川畑、2006)。具体的には、うつ病、甲状腺機能低下症、脳腫瘍、心因反応、慢性硬膜下血腫、パーキンソン病などの病気が発見されています。他にも薬剤の副作用で精神症状をきたしたケースや特に原因はなく一時的に幻覚・妄想を生じたケースなどもありました。このような場合には適切な治療により認知症症状の改善が期待できます。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No89(2008年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人



認知症の介護には介護者のゆとりが必要です。介護者自身が疲れきってしまわないためには、社会的な資源を活用することも大切です。介護保険によるデイサービス、ショートステイなどを利用して介護者が時間的な余裕を持つこと。訪問看護やヘルパーに入ってもらい、ケアの肩代わりを頼むこと。医師に相談して適切な薬物治療で症状を緩和すること。家族会などで問題意識を共有し各家庭からケアのヒントを得ることなどを考えましょう。認知症に関する相談窓口としては、兵庫県老人性認知症センター(兵庫医科大学内:0798-45-6050)や各市の保健所・保健センターの精神保健福祉相談、社会福祉協議会の認知症相談室などがあります。介護保険に関しては各市の介護保険担当者にご連絡ください。また、高齢者のみの家庭を狙った悪質商法の被害も増えています。認知症患者の権利擁護については、福祉サービスや日常の金銭管理を支援する福祉サービス利用援助事業(社会福祉協議会)や成人後見人制度(市役所の高齢福祉担当)があります。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No88(2008年11月号)掲載

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認知症の病態には、病気の本質である記憶力や判断力の障害から成る中核症状と自己の能力と周囲の環境とのミスマッチから起こる不安、興奮、不眠、イライラあるいはうつ状態や自発性の低下などの周辺症状とがあります。中核症状は病気の進行(脳の病的な変化)とともに悪化の傾向を取りますが、周辺症状に関しては周囲の環境の工夫やケアの仕方で良くもなり、悪くもなります。認知症の介護の基本は、本人の不安を少しでも取り除くように安心で快適な生活環境と楽しい気分作りが重要です。ゆっくりと本人のペースに合わせて、些細な発言は聞き流す態度で接すること(日にちの間違いなどをことさら指摘しない・・)。日常生活のなかのできることを見つけて家族としての役割を担ってもらうこと(時間を無為に過ごすことを避ける・・)。部屋を片付けて暮らしやすい環境を作ること(家の中でも迷わない工夫・・)などに注意しましょう。場合によっては睡眠導入剤や抗うつ薬などの併用で症状の緩和を図ることも考えられます。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No87(2008年10月号)掲載

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認知症の人は自分自身の客観的な症状に気がつきにくいものですが、「自分はなんとなくおかしい」、「自分は昔の自分ではなくなってきた」などといった漠然とした感覚を持っていることは少なくありません。自分の残された能力を精一杯使って生活を続けていますが、常に不安な気持ちやイライラした気分でストレスを抱えたまま日々を過ごしています。そのため気分が高まりすぎて落ち着きをなくしたり、周囲の人にやつあたりしてトラブルになることがあります。このような周囲との軋轢によって生じる問題は認知症の周辺症状と呼ばれ、認知症の主たる症状である記憶の障害や判断力の障害(これらは中核症状と呼ばれます)とは別に考える必要があります。すなわち認知症の人たちの個々の状態は、中核症状+周辺症状の組み合わせにより様々な特徴を持つことになります。中核症状は医学的な対応が、周辺症状には周囲の環境的な配慮が重要です。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No86(2008年9月号)掲載

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認知症は本人が自覚することは少なく、家族などの周囲の人によって気づかれることが多いことが特徴です。周囲が認知症に気づいたポイントとしては以下のような事項が挙げられます。同じことを何回も言ったり聞いたりするようになった、生活がだらしなくなった、置き忘れやしまい忘れが多くなった、計算間違いや物の名前が出なくなった、時間の感覚がおかしくなった、物事に興味や関心を持たなくなった・・などです。ほかにもテレビドラマの内容が理解できなくなった、薬の管理ができなくなった、買い物や料理が上手くできなくなったなど、これまでは十分できていたことができなくなるといった変化は身近に居る人が敏感に感じられる事柄といえます。このようなきっかけから専門外来を受診した後は、現状の認知機能の評価(記憶力の検査を始めとする神経心理学的検査)、認知症をきたす疾患の鑑別診断(アルツハイマー型認知症やその他の認知症・・)、そのほかの病態の鑑別(うつ病、せん妄・・)などが行なわれます。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No85(2008年8月号)掲載

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先に生じ、その後判断力の障害が起こります。すなわち、初期の時点では著明な記憶力の障害が認められるものの、判断力はある程度保たれている時期があります。この場合は社会生活に大きな支障はないので明らかな認知症とは言えませんが、必ずしも健常認知症は記憶と知能の障害ですが、通常は記憶力の障害がレベルとも言いがたい状態です。最近ではこのような時期を「軽度認知障害(MCI)」と呼ぶようになっています。前回記したように記憶と知能の障害はある日突然に起こるものではなく、正常と認知症とのあいだに境界領域があるといえます。この境界領域にあると判定された人たちは1年後に約1割が認知症に移行するとされています。物忘れについて心配する場合は、「ある物事(食事をした、どこかに出かけた、誰かと会った、何かを買った・・)をすっかり忘れて、人に言われても思い出さない」といった悪性の物忘れがどの程度あるかに注意すべきです。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No84(2008年7月号)掲載

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認知症は成人になってから起こる「記憶と知能の障害」です。記憶障害は物忘れのことですが、加齢に伴う「良性の物忘れ(正常者の物忘れ)」と「悪性の物忘れ(病的な物忘れ)」を区別して考える必要があります。前者では、例えば食事で食べた物の内容を忘れることはあっても食事を食べたこと自体を忘れることはありません。後者では、食事をしたことすら忘れてしまい何回も食事をせがむことになります。認知症では後者の物忘れがみられます。知能の障害とは日常生活を営むにあたっての判断力の障害を指します。朝起きて更衣や洗面をすることから始まり、仕事や家事をするにもあたっても過去の経験に照らし合わせて、今から何をすべきかを考えて人は日ごろから行動しています。認知症が進むとこの判断力が低下し、そのため社会生活に支障をきたします。アルツハイマー型認知症などの徐々に進行する神経変性疾患に伴う認知症では、この「記憶と知能の障害」はある日突然に起こるものではありません。     

  認知症をめぐって

地域情報誌「ともも」、No83(2008年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人



 高齢化社会の到来とともに認知症の患者さんは年々増加しています。一口に認知症といっても、そのなかには種々の疾患が含まれています。これまでは主として「アルツハイマー型認知症(以前は老人性痴呆と称されていました)」と「血管性認知症(脳血管障害の後遺症としての認知症)」の二つの疾患が取り上げられることが多かったですが、最近の研究では「レビー小体型認知症」や「前頭側頭型認知症」などの新たなタイプの認知症にも注目が集まってきています。また明らかに病的とは言えないまでも、年齢を考慮しても正常とは言い難い境界レベルの認知機能の低下は「軽度認知障害(mild cognitive impairment :MCI)」と称されるようになり、認知症の早期診断 ・早期治療の意義が検討されています。今回のシリーズではこれらの種々の認知症の特徴を順に解説し、診断や治療、ケアのポイント、社会資源の活用などにふれたいと思います。さらに個別の治療によって改善する特殊な認知症についても述べる予定です。     

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No82(2008年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人



頭痛のシリーズの最後でこれまでのまとめです。頭痛は大きく2種類に分けられます。いろいろな検査でも特に異常がなく頭痛そのものが病気の本体である一次性頭痛(機能性頭痛)と原因となる疾患(脳卒中、脳腫瘍、耳鼻科や眼科の病気など)があってその結果として頭痛が起こる二次性頭痛(症候性頭痛)です。前者の代表が片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などで、これらにはその病態に応じた治療(一般に薬物治療)が行なわれます。特に片頭痛に対しては研究が進み、最近では効果的に頭痛をとめる治療薬(トリプタン製剤)が使われるようになっています。しかし日本に840万人(15歳以上の人口の約8%)ほどいるとされる片頭痛患者さんの多くは、十分な治療を受けておられないのが現状です。つらい頭痛の悩みを抱えて困っている人は今も少なくありません。昔は「頭痛ごときで病院に行くなんて・・」と言われましたが、今は頭痛の原因を調べて適切な治療を受けるために専門医に相談することをお勧めします。     

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No81(2008年4月号)掲載


今回も子供の片頭痛の話です。片頭痛が起こったときは頭を振ったり身体を動かしたりすると余計に痛みが増します。光や音の刺激に対しても敏感になるので、明かりを消してカーテンを引いた暗い部屋で休ませます。状態によっては薬を服用して痛みを抑えることもありますが、鎮痛剤を長期に連用すると脳はかえって痛みに敏感になり薬の効果が切れた頃にまた頭痛が起こる(薬剤乱用頭痛)ようになるので、使い方には注意が必要です。市販の頭痛薬のなかには、いくつかの鎮痛成分を組み合わせたものやカフェインなどを加えたものなどがあります。一般に単一成分の鎮痛剤は薬剤の依存を起こしにくいとされているところから、鎮痛剤を使うとすればアセトアミノフェンあるいはイブプロフェンの単一成分の薬を選ぶべきでしょう。大人の片頭痛でよく使われるトリプタン製剤は日本では子供に対する使用方法がまだ確立されていません。通常の鎮痛剤などで効果が不十分なときは、欧米での報告をもとに10歳以上を目安として処方されることがあります。     

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No80(2008年3月号)掲載


子供の片頭痛の話を続けます。子供の片頭痛の特徴をまとめると、急に痛みが始まり、短時間で治まること、吐き気や腹痛などの消化器症状を伴いやすいこと、ズキンズキンとした脈打つような痛みではなく、頭が重い・締め付けられるといった緊張型頭痛様の痛み方が少なくないこと、学校の授業や運動、空腹などのストレスで起こりやすいことなどが挙げられます。ほかにも、家族(特に母親)が片頭痛であったり、兄弟に乗り物酔いや自家中毒、あるいは熱性けいれんやひきつけなどがあるという話しもよく聞かれます。子供の片頭痛の予防には、頭痛のきっかけになるストレス(人ごみや直射日光、騒音など)を避けること、寝過ぎや寝不足、朝食抜きなどの不規則な生活をしないこと、過剰な精神的緊張を強いらないことなどが重要です。食生活では、マグネシウム(大豆製品、海藻、ほうれん草など)やビタミンB2(レバー、卵、乳製品など)は片頭痛の頻度を減らす効果があるとされています。     

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No79(2008年2月号)掲載


前号の子供の片頭痛の続きです。片頭痛は大人では一般にズキンズキンとした脈打つような痛み方をしますが、子供の場合には頭が重い、締めつけられるといった緊張型頭痛のような痛み方をすることがあります。そのためなかなか片頭痛とわからず、長い間診断がつかないことも少なくありません。さらに大人と違う点として、学校のあるウイークデイ(週日)に頭痛が起こりやすいことが特徴的です。片頭痛は精神的なストレスとも密接なかかわりがあります。大人ではホッと家でくつろげる週末や休日に片頭痛発作を起こすことが多いですが、子供では日中の学校生活がストレスになるので週日の学校帰りに家で落ち着くと頭が痛くなることがあります。また学校でも午前の授業の最後あたりになって血糖が下がることや体育の時間に運動の刺激によって脳の血管が拡張することなどでも、片頭痛が誘発されることがあります。普段から朝食をしっかり摂ることや身体を動かすことが重要です。     

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No78(2008年1月号)掲載


頭痛の専門医である東京女子医大の清水俊彦先生にお会いした際に、『ママ、頭が痛いよ!』(ワンツーマガジン社)という子供の頭痛についてお書きになった本をいただきました。その内容の一部を紹介します。
小学校の子供にも片頭痛が起こることがあります(早い場合は幼稚園くらいから頭痛発作を起こす場合もあるそうです)。ただし子供の片頭痛の場合は大人と違う特徴があり、周囲の人になかなか理解されにくい点があります。たとえば頭痛の起こり方にしても、痛みがいきなり始まり、痛みの続く時間も短い(早い場合は数時間以内)ことが挙げられます。今まで元気にしていた子供が急に頭を痛がって、しばらくしてまたケロッと元気になるなど、場合によっては仮病のようにもみられることがあります。また、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの腹部症状が強いこと(いわゆる「自家中毒」様の症状)、めまいや立ちくらみなどを伴いやすい、乗り物酔いをしやすいなども注意すべきところです。


    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No77(2007年12月号)掲載


本や映画でおなじみの「ハリー・ポッター」は長年頭痛に悩んでいたことをご存知ですか? 今年、頭痛研究の専門誌に主人公のハリー・ポッターが経験する頭痛についての考察が掲載されました(Harry Potter and the Curse of Headache. J Head and Face Pain, 47:911-916,2007)。ハリーはホグワーツ魔法魔術学校在学中の数年間に何度も頭痛を繰り返し、しだいにその症状が激しくなっています。時には何も出来なくなるほどの強い痛みに襲われる姿も描かれており現在の国際頭痛分類第2版に当てはめると、おそらく片頭痛である(Probable Migraine)と考えられるそうです。興味深いこと に、この「ハリー・ポッター」シリーズが出版されてからイギリスの子供たちの間でも頭痛が数多く見られました。これはベッドに寝転がって仰向けのまま分厚い本を長時間読んだため、腕や肩、首に負担がかかり筋緊張型の頭痛を生じたもので、「ホグワーツ頭痛」と呼ばれたそうです。子供の頭痛について次号で解説します。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No76(2007年11月号)掲載


 今回は脳卒中と頭痛の話です。脳卒中には、脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」、脳の中の血管が切れてしまう「脳出血」、脳を取りまく血管に動脈瘤などができてそれが破裂する「くも膜下出血」があります。このうち、突然激しい頭痛を生じる、代表的な疾患が「くも膜下出血」です。この場合の痛みは、「これまで経験したことが無いような強い頭痛が突然に起きる」ことが特徴です。くも膜下出血では初回の出血で3割以上の方が亡くなるとも言われており、このような突発的な激しい頭痛(いきなりバットで殴られたような痛み・・)が起これば、直ちに脳神経外科で診てもらう必要があります。また、突然起こる激しい頭痛を「雷鳴頭痛」(文字どおり、頭の中に稲妻が落ちるような痛み)と呼ぶことがあります。この種の頭痛にはくも膜下出血以外にも、稀ですが脳血管の壁が裂ける「血管解離」や脳下垂体の中に出血する「下垂体卒中」などの脳血管に起因した頭痛のことがあります。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No75(2007年10月号)掲載


 内科疾患と頭痛の関係の続きです。血圧が高いと頭が痛くなると思われがちですが、携帯型血圧測定器で24時間の血圧変動と頭痛の有無を調べた最近の研究では、軽度(140〜159/90〜99mmHg)および中等度(160〜179/100〜109mmHg)の高血圧と頭痛の間には明らかな関係は認められていません。すなわち極端な高血圧(例えば、「褐色細胞腫」に伴う特殊な高血圧症など)でないかぎり、多少血圧があがったくらいでは頭痛は起こらないと考えられています。これは脳血管が身体の血圧の変動に関わらず、脳の血流を一定に保つ調節機構(脳循環自動調節能)を持っているためです。ただし、高血圧を長年放置して血圧が高いままで過ごしているひとでは、この脳循環自動調節能が壊れてしまい、極端な場合には頭痛とともに意識障害や痙攣発作を急にきたすことがあります(高血圧脳症)。脳血管に対する負担(圧負荷)を軽減するためにも、血圧は普段から適正な値にコントロールしておくことが重要です。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No74(2007年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

内科の疾患に伴う頭痛の話題です。高齢者(60歳過ぎ)で注意すべき頭痛として、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)による頭痛があります。これは文字通り側頭部(一般に片側性)の脈打つ痛みを起こす病気で、こめかみあたりの血管(動脈)が赤く腫れて痛みをもってくることが特徴です。発熱や全身倦怠感、体重減少、関節痛・筋肉痛などの全身的な症状を伴うことも少なくありません。この病気自体は比較的まれなものですが頭部の血管自体に炎症が起こるので、約三分の一の患者さんでは眼の血管にも影響がおよんで視力や視野に障害(失明の場合もある)をきたすことがあり要注意です。血液検査では炎症の反応がみられ、眼底検査や頚部の血管の画像検査でも異常が認められます。痛みのある部位の側頭部の血管の一部切り取って調べて、特有の病理所見があれば診断は確定します。治療にはステロイド剤の投与が行われ、約90%の人では治った状態になります。失明を防ぐためにも早期からのステロイド療法が望まれます。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No73(2007年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 脳神経外科に関連した頭痛の話題です。慢性硬膜下血腫や脳腫瘍のように頭のなか(頭蓋骨のなかのスペース)でしだいに大きくなるかたまりができた場合には、いつの間にか頭痛がするようになります。脳は頭蓋骨に囲まれた一定の空間のなかにあります。そこに新たな血腫(血液のかたまり)や腫瘍(良性・悪性のいずれでも)ができて、それが大きくなっていくと頭蓋骨のなかの圧(頭蓋内圧)が高くなり頭が痛みます。この場合は、特に朝起きたときから痛むのが特徴です(睡眠中には炭酸ガスがたまる傾向のため、脳の血管が張って頭蓋内圧がより上がる)。他には病変の部位や大きさに応じて、手足のしびれ・脱力、呂律の障害などの神経症状が見られます。

 特に慢性硬膜下血腫は高齢者に多い疾患です。軽く頭を打ってから数週間から数ヶ月して、頭蓋骨と脳の間に血腫ができるために症状を呈します。この場合は、比較的簡単な手術で治りますので、頭部CTなどの画像診断で早めに発見することが重要です。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No72(2007年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 これまで耳鼻科や眼科と頭痛の関係を述べましたが、今回は歯科と頭痛に関する話題です。この領域の痛みは「国際頭痛分類第2版」でも、二次性頭痛のなかの「11.6:歯、顎などの障害による頭痛」、「11.7:顎関節症による頭痛」として取り上げられています。特に後者の顎関節症では、下顎を動かして物をかむときに側頭部の筋肉に力が入りすぎてしまい、頭痛・頭重を伴うことがよくあります。顎関節症の特徴的な症状は、「口を大きく開けられない」、「口を開け閉めする際に顎関節がゴリゴリと鳴る」、「硬いものをかんでいると顎が疲れる」など様々です。以前は原因としてかみ合わせが悪いことが重視されていましたが、最近ではそれ以外に精神的因子などの多因子の関与が指摘されています。症状が長引けば側頭部の筋肉の過緊張に加えて、顎関節や周囲の組織にも炎症性の痛みを起こすので、顎の動きがますます悪くなることがあります。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、No71(2007年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

今回も眼科に関連した頭痛の話です。脳からの指令によって眼球はあちこちの方向に動きます。この眼球の動きをコントロールしている神経のひとつに動眼神経があります。動眼神経の働きがおかしくなる(動眼神経麻痺)と、眼球が思うように動かなくなったり(その結果、物が二重に見える=複視)、まぶたを持ち上げられなくなります(眼瞼下垂)。頭痛とともにこのような複視や眼瞼下垂が生じる場合には要注意です。眼球の奥の方に炎症(炎症性肉芽腫)が起こっていたり、頭の中に動脈瘤ができていたりする可能性があります。また糖尿病の患者さんのなかにも眼の奥の痛みとともに急に動眼神経麻痺が起こることがあります(糖尿病性眼筋麻痺)。
また、眼の中には房水と呼ばれる水が循環しており、この眼内液の圧を眼圧(正確には眼内圧)と呼びます。この眼圧が高くなる緑内障でも眼痛とともに頭痛を生じることがあります。特に急激に眼圧が上がった場合には眼の痛みよりも頭痛が主体となり、吐き気もするのでくも膜下出血と紛らわしい場合があります。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No70(2007年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

 今回は眼科領域の病気に関連した頭痛のはなしです。中高年者では、老眼による眼精疲労によって眼の奥や後頭部に鈍痛をきたすことがよくあります。若い人でも長時間のパソコン作業で近くを強制的に見ている(近距離の強制注視)と同じように眼精疲労による頭重・頭痛をきたすことがあるので要注意です。このような画面を見ながらの作業のために頭痛や目の乾燥感(ドライアイ)、遠くをみるとぼやけた感じ(遠見時の調節障害)などの一連の症状が出た場合はVDT(visual display terminal)症候群と呼ばれます。
 高齢者では眼瞼(まぶた)がたるんで瞳に覆いかぶさってしまい、目の前のものが見にくくなることがあります。そのため知らず知らずのうちに後頭部・後頚部の筋肉に余計な力が入って緊張型頭痛が生じることがあります(眼瞼性頭痛)。この場合は上眼瞼を引っ張り挙げる手術が有効です。若い人でも数年以上の長期間ハードコンタクトレンズを装着している場合にも、その刺激で眼瞼が下がってくることがあるそうです。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No69(2007年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

頭のなか以外の原因でも頭痛が起こります。たとえば、耳鼻科領域の病気には頭痛を起こすものが少なくありません。その代表は副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)による頭痛です。この場合の痛みの特徴は、前頭部の痛みが多い、起床時から頭が痛い、1日のうちでも痛みの程度に変動がある、頭を下げる(下をむく)と痛みが強くなるなどです。また鼻汁・鼻閉などの鼻症状を伴うことや比較的若い人に多いことなども挙げられます。副鼻腔炎に伴う頭痛は鼻部の知覚神経を介した投射痛とされており、炎症症状の急性期に生じることが多いようです(慢性的な蓄膿症では頭痛は起こりにくい)。診断にはレントゲンやCT・MRIなどによる画像検査が役立ちます。治療には抗生物質(抗菌剤)の投与や耳鼻科的な処置が必要です。
実際に片頭痛と思われたが副鼻腔炎の急性増悪であったケースもある一方で、逆に副鼻腔炎による頭痛とされていた中に片頭痛が多く含まれていた(片頭痛でもしばしば鼻症状を伴うため)との報告もあり、各々の専門家による診察が重要になります。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No68(2007年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

今回も食べ物と頭痛の話題です。アイスクリームやかき氷などの冷たいものを食べると、鼻の奥あたりを中心に頭痛がすることがあります。
これは「アイスクリーム頭痛」と称されています(最近の分類では「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」)。
冷たいものが口の中やのどを通過する際に、三叉神経や血管を刺激するために生じると考えられています。もともと片頭痛を持っているひとに、より起こりやすいようです。

調味料としてグルタミン酸ナトリウムを使いすぎると、食べた後に頭痛がすることがあります。
これは「中華料理店症候群」と称されています(アメリカの中華料理店の食事で起こりました)。グルタミン酸ナトリウムは一般にも広く使われていますが、通常の使用量では頭痛は起こしません。
また、ソーセージやハムに使われている硝酸塩でも頭痛が起こることがあり、「ホットドック頭痛」と称されています(硝酸塩は狭心症の薬としても使われています)。日本ではこれらの食品に含まれる硝酸塩の量は少ないので、頭痛の心配はないと考えられています。

    

  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No67(2007年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人

前回はカフェインと頭痛との関係にふれました、今回はそのほかの食品と頭痛のはなしです。

血管拡張作用を持つ物質を含む食品は頭痛を引き起こすことがあります。その代表はアルコールです。 特に赤ワインにはヒスタミン様物質やポリフェノールが含まれているために、他のアルコール飲料よりも片頭痛の誘発作用が強いとされています。
ベーコンやソーセージなどに含まれる亜硝酸化合物やシュガーレスガムなどに含まれる甘味剤のアスパルテームなども血管拡張作用があるので、片頭痛が続く時期にはこれらの食品・嗜好品は控えるほうが良いでしょう。
また一時的に血管を収縮させる作用のある物質も、その後に反動的な血管拡張が起きて片頭痛と同様の機序で頭痛を生じることがあります。この代表はチョコレートやココア、柑橘系果実(オレンジなど)に含まれているチラミンという物質です。チラミンはカマンベールやブルーチーズなどのナチュラルチーズにも多く含まれています。片頭痛のある人では、これらのチーズを肴に赤ワインを飲むことによって頭痛を引き起こす可能性があり要注意です。


  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No66(2007年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
「市販のドリンク剤で頭痛が改善するのはなぜ?」という質問をいただきました。
個人差はありますが、ドリンク剤で頭痛が改善することがあります。
これはドリンク剤に含まれているカフェインの効果と思われます。
欧米では17世紀頃からカフェインに頭痛の改善効果があることが知られていました。
脳血管に直接作用したり、脳内の神経伝達物質を介したりして片頭痛にも有効とされ
ています。
しかしカフェインも摂りすぎ続くと、「薬剤乱用頭痛」(とももNo.62)と同様に、
リバウンドとして「カフェイン離脱頭痛」を引き起こすことがあります。
最近の基準では2週間を越えてカフェインを1日200mg以上摂っていることがこの頭痛の
目安になっています。
カフェインを含む飲料は多く、無意識のうちに摂りすぎていることもあります。
例えばコーヒー1杯には100〜150mg、お茶1杯には50〜75mg、ドリンク剤1本やコ
ーラ1杯にも50mg程度のカフェインが含まれています。
市販の鎮痛剤や風邪薬にもカフェイン含有のものが多いようです。
カフェインを極端に摂りすぎる(1000mg 以上)とイライラしたり動悸やふるえが起こ
ることもあります。



  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No65(2006年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
これまでに取り上げた片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛は、いずれもその頭痛の背後
に原因となる疾患を持たない「一次性頭痛」と呼ばれるものです(なんらかの原因
疾患に伴う「二次性頭痛」については後ほど解説します)。
その他の一次性頭痛には、咳やいきみでおこる「一次性咳嗽性頭痛」、運動(例えば
ランニングや水泳、重量挙げなど)でおこる「一次性労作性頭痛」などがあり、なか
には「性行為に伴う一次性頭痛」と呼ばれる珍しい頭痛もあります。
筆者はこれまでに性交時に頭痛が生じた患者さんを何人か診たことがありますが、こ
のタイプの頭痛は医師の間でもあまり知られておらず、適切な診察や診断を受けてい
ないことが考えられます。
この頭痛の原因はまだはっきりしていませんが、おそらく一時的な自律神経系の不調
による血管反応性の異常であろうと考えられています
(土山、湯浅:日本医事新報 No.3683, 1994.)。
クモ膜下出血や脳血管解離などの頭痛を否定したうえで、命にかかわる頭痛でないこ
と説明することが必要です。



  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No64(2006年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
今回は群発(ぐんぱつ)頭痛を取り上げます。
この頭痛は片頭痛とはまた違った特徴を持つ頭痛です。
それは、1年のうちで頭痛を起こしやすい時期が周期的にやってくる(群発期がある)
こと、頭痛が目の奥や側頭部などの常に同じ部位に起こること、痛みとともに目の充
血やまぶたの浮腫み、鼻水などが見られること、頭痛が睡眠中に起こる(痛みで目を
覚ます)ことが多いなどが挙げられます。
また、片頭痛は一般に若い女性に多いのに対して、群発頭痛は20〜40歳代の大酒家や
ヘビースモーカーの男性に多いことが知られています。
頭痛がない時期には全く元気であるために、なかなか正しい診断がつかないことが少
なくありません。
群発頭痛にも片頭痛の治療薬であるトリプタン製剤が有効です。
特に夜間に救急で受診せざるを得ないような激しい痛みのケースではトリプタン製剤
の皮下注射が著効することがあります。
また吐き気で薬が飲めない場合にはトリプタン製剤の点鼻薬が用いられることがあります。
酸素吸入も痛みに対して有効とされています。



  いろいろな頭痛

地域情報誌「ともも」、 No63(2006年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
前号までは片頭痛を中心にお話してきましたが、これからはそれ以外の「困った頭痛」
について解説します。今回は「緊張型頭痛」をとりあげます。これは「いわゆる肩こり」
が高じて、頭が重く感じて痛んでくる頭痛です。この頭痛の特徴は、頭全体(両側性)が、
締め付けられる(非拍動性)ように痛むことです。立ったり歩いたりしても片頭痛のよう
に痛みが増悪することはなく、光をまぶしく感じたり(光過敏)・音が頭に響いたり
(音過敏)することも少ないとされています。緊張型頭痛は頭(頭蓋骨)を取り巻く筋肉
の緊張が強いために起こると考えられています。そのため治療としては、痛みの強い時は
各種の鎮痛剤(非ステロイド系消炎鎮痛剤)や筋弛緩剤、抗不安剤などを組み合わせて投与 したり、こわばった筋肉をほぐすための局所麻酔剤のブロック注射などが行われます。
再発予防には頚部・肩部の運動(肩こり体操・頭痛体操)やストレッチなどが勧められます。
ただし、締め付けられるような頭痛でもむかついて吐いてしまうほど痛くなる場合は片頭痛
のことがあるので、専門医にご相談ください。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、 No62(2006年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
鎮痛剤の飲み過ぎによる頭痛については以前に「鎮痛剤誘発性頭痛」(とももNo.36)
として紹介しましたが、最近では各種の頭痛頓挫薬(各種鎮痛剤、エルゴタミン製剤、
トリプタン製剤など)の不適切な使用による頭痛の実態が知られるようになり「薬剤
乱用頭痛」と呼ばれる一群の頭痛が注目を浴びるようになりました。具体的には頭痛
(特に頭全体の圧迫感のような痛み)が月に15日以上ある人で、これらの薬剤を3ヶ月
を越えて月に10日以上(鎮痛剤の場合は15日以上)使用している場合には「薬剤乱用
頭痛」を考える必要があるとされています。この場合、適切な時期に薬剤の使用を
中止すると2ヶ月以内に頭痛は改善すると言われています(徐々にやめるよりも、
できるだけすぐに中止する方が良いとされています)。ただし、これらの薬剤から離脱
する際には一時的に頭痛が生じることがあります(薬剤離脱性頭痛)。市販の鎮痛剤に
含まれていることの多いカフェインも、薬剤離脱時の頭痛の原因になることがあるよう
です。いずれにしても、頭痛薬を月に10日や15日以上使用する場合には注意する必要が
あります。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、 No61(2006年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 土山雅人
前号にも記しましたが片頭痛の薬として注目されているトリプタン製剤は、
一般の鎮痛剤のように痛みの経路を抑えて作用するのではなく、片頭痛の病
態に関与するセロトニン系に働いて片頭痛を本質から治療する薬剤です。
これまでの実績では、一般の片頭痛の60−70%以上に明らかな痛みの改善が
報告されています。
しかし筆者も参加した関西での多数の頭痛患者さんの実態調査(前々回参照)
では、すでに前医でこのトリプタン製剤を投与されていながら新たに頭痛専門
医の診察を受ける患者さんが少なくありませんでした。この原因としてはトリ
プタン製剤の服薬のタイミングの問題が考えられます。以前は一般の鎮痛剤を
使って効果がなければこのトリプタン製剤を服用するとされていましたが、最
近では片頭痛が起こった時は早めから使うことが勧められています(早期服薬)。
実際に早期服薬によって片頭痛の90%以上に効果がみられたとの研究結果もあ
ります。具体的には片頭痛が起こり始めて頭を動かすと痛むようになった時、
あるいはじっとしていてもズキンズキンとした脈打つ痛みを感じ始めた時に服薬
するのが最適のタイミングとされています。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、No.60 (2006年7月号)掲載

近年、片頭痛の治療にトリプタン製剤というグループの薬が使われるようになってきました。
これは通常の痛み止めの頭痛薬とは違って、「片頭痛」の治療専用に開発された薬です。
片頭痛が起きるのには脳内のセロトニンと呼ばれる物質が関係していることが知られるようになりました。
トリプタン製剤はこのセロトニンの働きを制御をすることによって、「片頭痛」の痛みをより根本的に取り除きます。
現在、日本で使えるトリプタン製剤は4種類で、これには通常の錠剤のほかに、口の中で溶ける剤型(お菓子のラムネ様で水なしで飲める)や鼻から噴霧する剤型(点鼻薬)あるいは注射剤(筋肉注射)などの特徴を持ったものが作られています。
これらのトリプタン製剤はいずれも有効率が高い薬ですが、個々の患者さんによって効果が異なる場合もあります。
また片頭痛時の状況(吐き気が強い、出先で薬を飲みたい・・)に応じて適切な剤型を使い分けることも考慮されます。
一般的には副作用が少なく安全性の高い薬ですが、残念ながら妊婦や小児ではデータが少ないので積極的に使うことは勧められていません。来月も薬の話を続けます。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、No.59 (2006年6月号)掲載

関西の各地で頭痛診療に取り組んでいる専門医の集まりである「関西頭痛懇話会」が227人の片頭痛と診断された患者さんにアンケート調査を行い、 その結果を私が会を代表して今年5月に東京で開かれた第47回日本神経学会総会で発表しました。 それによると、72%の患者さんは過去に頭痛を主訴に医療機関に受診した経験がありましたが、 そのうちの59%の方は片頭痛以外の頭痛の診断を受けていました。 薬剤の処方を受けていた患者さんの69%は非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)を投与されていましたが、 21%の人は過去にトリプタン系薬剤を投与されていました。また9%の患者さんはエルゴタミン製剤を投与されていました。 ほかにも、インターネットによる情報をもとに専門施設を受診する患者が多かったことや片頭痛の際には普段の肩こりとは異なる特有の肩や首のこりを伴うことが多かったことなどがわかりました。 今回の調査から、今も片頭痛は十分な診断や治療が行われず日常生活の大きな支障になっており、 適切な診療を受けていない患者が多数いらっしゃることが改めて確認されました。



  頭痛の話題

 地域情報誌「ともも」、No.58 (2006年5月号)掲載

今年(平成18年)の2月に、日本の頭痛診療の専門家の集まりである日本頭痛学会から「慢性頭痛の診療ガイドライン」が発表されました。 本書は臨床現場で遭遇する疑問に対する一問一答形式になっているので読みやすい記述になっているのが特徴です。 内容は医療者向けで各種の頭痛(片頭痛、緊張型、群発頭痛)の病態や最近の薬物療法の解説などが詳しく書かれています。 ほかにも市販薬の効果や漢方薬の有効性あるいは薬物療法以外の治療法、片頭痛の予防法、妊娠・授乳・月経時の片頭痛の対応、 子供の頭痛などについての解説の項目もあり、一般の頭痛に悩む人にとっても役立つと思われます。 このガイドラインは本として医学書院から出版されていますが、日本頭痛学会のホームページ(http://www.jhsnet.org/)からも 読むことができます(会員以外でもアクセスできます)。

また、慢性頭痛に関するホームページホームページとしては、
■頭痛大学(http://homepage2.nifty.com/uoh/index.html
■頭痛によく効くホームページ
http://neurol.med.tottori-u.ac.jp/takeshima/ha/index.htm
■shesmile.net(http://www.shesmile.net/index.html
などがあります。いずれもわかりやすい頭痛の解説が記載されています。


  頭痛の話題

 地域情報誌「ともも」、No.57 (2006年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 今回は日本頭痛学会理事長の坂井文彦先生の片頭痛に関する資料:「患者さんが頭痛を訴えたとき 〜片頭痛診断のポイント〜」を参考に、最近わかってきた日本人の片頭痛の特徴を記します。

・ 片頭痛に先立って目の前がチカチカするような前触れ(閃輝性暗点など)を伴う人は2割弱で、多くの片頭痛の人は特に前兆なく頭痛が起こります。

・ 頭の片側のみが痛くなる片頭痛はむしろ少なく、半数以上は頭の両側や頭が全体的に痛くなります。

・ 片頭痛は一般に「ズキズキ」、「ガンガン」とした脈打つような痛みが特徴ですが、片頭痛の際に肩こりを伴う患者さんも多く、緊張型頭痛(頭部の筋肉の過緊張による頭痛)との鑑別が難しい場合があります。

・ 片頭痛が起こるきっかけとしては、肩こりやストレス、不規則な睡眠(特に寝過ぎると片頭痛は起こりやすくなります)、月経、天候などを挙げる人が多いようです。



  頭痛の話題

 地域情報誌「ともも」、No.56 (2006年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

片頭痛は女性に多い頭痛ですが、これはひとつに女性ホルモンの影響が考えられています。そのため片頭痛の女性の多くは、月経前や月経中に強い頭痛を自覚するとも言われています(なかには月経の時だけに片頭痛が起こる人もいます)。これを「月経関連片頭痛」と呼びますが、この頭痛は市販の頭痛薬ではなかなか治まらないことが多く、毎月の月経の時期になると憂鬱な気持ちになる人もおられます。逆に片頭痛持ちの方が妊娠すると多くの場合は頭痛は軽くなるようです。ただし出産後はまた以前の状態にもどります。いずれの場合も体内の女性ホルモンが大きく変動することに関連して起こる現象と説明されています。長い目で見ると女性では閉経を過ぎると、一般に片頭痛はなくなっていくことになります。



  頭痛の話題

 地域情報誌「ともも」、No.55 (2006年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

「肩こり」が強くなると「頭痛」がすると言われます。たしかに長時間同じ姿勢で作業した後などには、肩や首の筋肉がこわばって頭が重い感じになることがあります。これは「緊張型頭痛」(以前は、「筋緊張性頭痛」とも呼ばれていました)というタイプの頭痛で、筋肉の緊張をとるような薬剤や適度な運動などで一般に症状は改善します。しかし肩こりのなかにも「肩がこり過ぎて吐き気がする」、「寝込んでしまうほど頭が痛くなる」という人もいます。この場合は片頭痛の予兆(前ぶれ)として肩こりを感じている可能性が高くなります。最近の調査では片頭痛患者さんの75%は片頭痛の時に肩こりを伴うとのことです。これまで片頭痛は「ズキンズキン」とした脈うつような痛み(拍動性頭痛)が主体とされていましたが、年齢や経過などにより痛みの性状が様々です。また、頭の片側だけでなく両側が痛くなる人、頭痛のたびに痛む部位が変わる人など、片頭痛の痛み方にも個人差があります。頭痛の診療の際には、頭痛の起こり方や痛みの特徴、日常生活への影響度、随伴する症状、思いあたるきっかけなどの情報を医師にお伝えください。



  頭痛の話題

 地域情報誌「ともも」、No.54 (2006年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

「片頭痛」という言葉はよく知られていますが、「片頭痛」という病気の実際を知っている人は意外と少ないようです。これは医療者側にとっても同様で、片頭痛患者さんの74%が前医では片頭痛以外の診断(「ただの頭痛」や「疲れやストレスによる頭痛」あるいは「病名は特にない」)であったとの報告もあります。日本人に多い片頭痛を適切に見分けるために以下の「片頭痛スクリーナー」という簡単なめやすが作られ、平成17年の国際頭痛学会で発表されました。この基準を用いた片頭痛の的中度は90%以上と実証されています。

【過去3ヶ月に経験した頭痛について下記の4項目が「なかった」、「まれ」、「時々」、「半分以上」のいずれかであったかを考えてください】(詳しい内容は当院のHPに載せています)

1)歩いたり階段を昇り降りするなどの日常生活の動作で頭痛はよりひどくなりますか? じっとしている方が楽ですか?

2)頭痛に伴って吐き気がしますか?

3)頭痛に伴って光をまぶしく感じますか?

4)頭痛に伴って臭いが嫌だと感じますか?

これらの4項目中2項目が「ときどき」か「半分以上」の人は片頭痛の可能性があります。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、No.53 (2005年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 「片頭痛」は単に頭の片側が痛い状態を示す言葉ではありません。「片頭痛」とは特有の痛みの原因を持ったひとつの疾患です。日本では片頭痛の患者さんは840万人と推定されており、糖尿病(740万人)や高血圧性疾患(719万人)よりも多い病気と言われています。片頭痛に悩む方は家事・育児や仕事に追われる30歳・40歳代の女性が多く、その75%近くの人が「頭痛のために寝込むほど」あるいは「日常生活に支障が大きい」と感じているそうです。周囲の人になかなかこの痛みが分かってもらえなかったり、頭のCT・MRIを撮っても異常がないので病院でも適切な対応をとってもらえなかったりで困っている場合も少なくないようです。最近の研究によると、片頭痛は頭蓋内の血管に分布する三叉神経の炎症性変化に伴って血中のセロトニンと呼ばれる物質の量が大きく変動するために起こると考えられています(片頭痛の三叉神経血管説)。このセロトニンに選択的に働いて片頭痛を抑える薬(トリプタン系薬剤)が数年前から日本でも使われるようになりました。従来の鎮痛剤とは全く異なった機序の「片頭痛の特効薬」とも呼べる薬です。



  頭痛の話題

地域情報誌「ともも」、No.52 (2005年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 頭痛についてはこれまでも何回か取り上げました(とももNo.17,36,37,38)が、その後の頭痛診療の進歩も含めてシリーズで解説します。2004年に公開された国際頭痛学会による「国際頭痛分類第2版」では、頭痛は大きく14のカテゴリーに分類されています。さらに各々のなかでサブタイプ、そしてサブフォームに分けられ、各頭痛疾患別に明確な診断基準が定められています。このようにひとくちに「頭痛」と言ってもその原因となる疾患には様々なものがあるので、的確な診断のもとにその原因に応じた治療をおこなう必要があります。

とりわけ「片頭痛」の診療はこの数年で大きな進展がみられています。従来の鎮痛剤とは違って、より原因に則した治療薬であるトリプタン系の薬剤が使われるようになり、長年の頭痛の悩みから開放された人も少なくありません。現在ではこの薬は錠剤だけでなく、口の中で溶ける製剤や点鼻薬などいくつかの使用しやすいタイプが開発されています。残念ながら正しく片頭痛の診断を受けていないために、このような薬が使われていないケースもまだ多いのが実情です。



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.51 (2005年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 施設や在宅の看護・介護の現場では歯科の先生や歯科衛生士さんの活躍で、「口腔(こうくう)ケア」への関心が高まっています。口は、食事や会話、呼吸など生活するのに欠かせない重要な役割りがあります。また、歯が抜けることで顔つきが変化したり、口臭がすることなどで外部的にも影響を与えます。普段から意識して口の中の手入れをすることが何歳になっても必要です。極端な話、口から食べられないので管を使って栄養を摂っている場合(胃ろうの方など)でも、口の中を良い状態に維持する工夫は欠かせません。だれでも口の中には無数の細菌や真菌(カビ菌)を持っています。したがって適切な口腔ケアを怠るとすぐに口の中は不潔になり、むし歯や歯周病のきっかけになったり、唾液の分泌が不十分になり口の中が乾燥状態になったりします。そのために食事がしにくくなる、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるなどの問題が起こります。義歯(入れ歯)をしている場合には、それをきれいに保つことも不可欠です。特に自分で義歯の手入れができない人では周囲が気をつける必要があります。



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.50 (2005年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 今回は安全に食事をするポイントをいくつか紹介します。食事の時に身体がこわばっていると上手く食べることはできません。食事の前に軽く準備運動をしましょう。首を回したり肩を上げ下げする、両腕を持ち上げて背伸びをする、頬を膨らましたり舌を左右に動かしてみる、深呼吸をするなどでリラクゼーションを図ります。食べやすい食事としては、性状が均一で適度な粘りがあり口の中でバラバラにならずに飲み込めるものが適しています。食事をあまり細かく刻みすぎると口の中で食塊としてまとまらずにかえって気管に入ってしまうことがあります。必要に応じてあんかけにしたり市販のトロミ剤を使ったりするのも良いでしょう。一般に食べにくいものとしては、味噌汁のように液体と固体が混在しているもの、スジがある野菜、唾液を吸い取ってしまうパンやホクホクのお芋、のどにペッタリへばりつくワカメ、弾力があって噛み切りにくいお餅や蒟蒻、蒲鉾などが挙げられます。味付けは甘い・辛いがはっきりしたもの、また温度もある程度熱い・冷たいがはっきりしたものが嚥下の反射をうながします。



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.49 (2005年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

嚥下機能も身体のほかの機能と同様に、加齢とともにその働きが低下していきます。高齢化による摂食嚥下障害にはいくつかの原因があります。ひとつには口の中の環境が変わることが関係します。歯が抜けて噛みにくくなること、口の中や舌の知覚が鈍くなるために食べ物が上手く噛めているかがわかりにくくなりこと、唾液の分泌が少なくなって飲み込みにくくなることなどが起こります。また、噛んだり飲み込んだりするのに必要な口や顎の筋肉が弱ったり、のどを支える靭帯が伸びて喉仏(のどぼとけ)の位置が下がるため飲み込むのに余計に力が必要になることなども関与します。

このように高齢者では、もともと病気のない人でも徐々に食事をすることに問題が出てくることがあります。食事の際にむせる、のどに食べ物が残る感じがする、食後にガラガラ声になる、食事に時間がかかるなどは嚥下障害の初期の徴候の可能性があります。水やお茶を飲むと咳き込む、パサパサしたものや粉っぽいものが飲み込みにくいと言うようになった場合にも注意する必要があります。嚥下障害がすすんで痩せてしまい、体力が落ちて肺炎を繰り返すようになる前に適切に対応する必要があります。



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.48 (2005年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

前回は食べものを飲み込む過程にはいくつもの段階があることを述べました。
では、「食事をする」ことは単に食べものを飲み込むことだけでしょうか?
食事にまつわる問題は、医療に直接関連したことから日常生活に密着した内容まで多岐にわたります。
「食事」に関連する問題点を列挙してみます。

・医療関連:嚥下障害の診断、適切な栄養法(胃瘻造設・・)の選択、誤嚥性肺炎の治療、全身的な健康状態の把握など

・歯科関連:歯牙や義歯の管理、口腔機能・咀嚼力の向上、口腔内の衛生管理など

・リハビリ関連:嚥下機能改善の訓練、姿勢を保つ筋力の増強、手先の細かい動作の訓練、使いやすい食器の選択など

・薬剤関連:嚥下機能を障害する薬・改善する薬・栄養剤などの情報、薬ののみ方の工夫(粉や水薬にする・・)など

・介護関連:安全な食事介助の技能の向上など

・調理関連:食材や調理法(とろみをつける・・)の工夫など

・栄養関連:栄養状態の評価、微量元素の配慮など

・ざっと考えてもこのように数多くの事項があります。
嚥下機能に障害を持ったひとが安全で適切な食事を日々続けていくには、数多くの職種の専門家がチームとして関わる必要があります。



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.47(2005年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 ひとが物を飲み込む動作を始めるのは、母親の子宮の中の胎生27週ごろからと考え
られています。胎児の頃は羊水を飲み込んでいますが、生まれてからは毎日食事をと
るようになります。食事の際に食物を飲み込む過程は、次のように大きく5つの段階
に分けられます(摂食・嚥下の5段階)。

1)認知期:食事をすることを理解して食物を認識し、何をどのくらい口に入れるか
の見当をつけます。
2)準備期:実際に食物を口まで運び、噛み砕いて(咀嚼)、飲み込みやすい状態に
します(食塊の形成)。
3)口腔期:飲み込みに適した状態の食塊を、のどの奥の咽頭の入り口まで舌で送り
ます。
4)咽頭期:反射運動により食塊を間違いなく食道に送ります。咽頭は、口から食道
に入る食塊と鼻から気管に入る空気の通り道が交差しているところです。ここの通過
を失敗すると食塊が気管や肺に入る事故が起こります(窒息、誤嚥)。
5)食道期:食道に入った食塊を胃の中に送り込みます。

この一連の過程が円滑に進まないとうまく食事ができなくなります。しかし場合に
よっては少しの工夫で安全に食事ができるようにもなります。また、拒食や過食のよ
うに食事には心理的な背景も重要です



  嚥下障害をめぐって

地域情報誌「ともも」、No.46(2005年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 嚥下(えんげ)とは食べ物や水分を飲み込むことを意味します。我々は毎日食事を して、1日に何回となく飲み込む動作を行っています。通常はこのような嚥下につい てあまり意識することはありませんが、スムーズに物を飲み込むには口や喉の機能が しっかりと働く必要があります。嚥下に関わる筋肉は50以上にのぼり、これらを円滑 に連携させて動かすには高度な神経機構によるコントロールが欠かせません。脳神経 の疾病や老化などに伴って嚥下の機能に異常が起こった状態を嚥下障害と呼びます。 最近は医療や在宅ケアの現場で嚥下障害に関心が高まっています。食事は生きる上 で不可欠なことですが、嚥下障害のある人にとっては食事をすることは食べ物が喉に 詰まる窒息や気管・肺に入り込む誤嚥(ごえん)の危険と背中合わせの行為とも言えま す。嚥下障害を早期に発見して機能の回復を図ること、嚥下障害の状態に応じて適切 で安全な栄養補給・水分補給の方法を考えることなど、嚥下障害をめぐっては各種の 専門職が協力して解決しなければいけない問題点が数多くあります。



  神経難病について

地域情報誌「ともも」、No.45(2005年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 難病とは、原因が不明で治療法が確立していない病気をさします。多くは経過が年 余にわたり、本人・家族の精神的・経済的・社会的負担が少なくありません。国は 「特定疾患対策事業」として、難病についての様々な研究や支援の事業を行っていま す。難病の範疇に入る病気は多々ありますが、特定疾患として認定された45の疾患に 関しては医療費の公費負担制度が整備されています(他にも県や市独自の公費負担や 見舞金制度もあります、詳しくは保健所などにお問い合わせください)。この45疾患 のうち、三分の一以上は脳神経系に関係するもの(神経難病)です。兵庫県の実態(平 成14年)をみると、特定疾患と認定された患者さんは全部で22,500名余りで、そのう ちパーキンソン病(認定は中等症以上の場合)が約3,200名、脊髄小脳変性症が約 1,000名、多発性硬化症約380名、筋萎縮性側索硬化症が約350名などとなっていま す。また、このような制度から外れている難治性の脳神経系の病気もあり、個々の対 応に苦慮する場合もあります。難病に関わる相談は兵庫県難病相談センター(06− 6482−7205)が対応しています。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.44(2005年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 パーキンソン病の患者さんの病状は様々です。手足のふるえが強い人、動作や受け 答えがゆっくりで時間がかかる人、足元が不安定ですぐに転びそうになる人など、同 じ病名でもひとりひとり異なります。もちろん薬をのむことで大きな不自由なく生活 している人も多数おられます。しかし一般的にはそれほど知られている病気ではない ので、しばしばこのような特徴的な症状を患者さんの周囲に理解してもらえないこと があります。また、患者さん自身も病気についての情報を得ることに苦労しておられ ることが少なくありません。パーキンソン病には患者さん同士が集まって作られてい る患者会があり、患者さんや家族の方が療養の工夫や日々の生活のコツなどを話し 合っています。各地で定期的な集まりも行われており、私も病気の相談のために呼ば れることがあります。この「全国パーキンソン病友の会兵庫県支部」の連絡先は、神 戸市中央区加納町4-10-16 エピファニービル2F(電話:078−334-4570)です。 年に4回会報を発行しており、いろいろな情報が得られます。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.43(2005年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

パーキンソン病では、脳内のドパミンと呼ばれる物質が少なくなるために手足がふ
るえたり動作が鈍くなるなどの症状が起こります。そのために主として薬物による治
療が行われます。治療は、症状の程度とそれによる日常生活の不自由さの状態に応じ
て行われます。治療に用いられる薬は作用の違いから大きく分けて六つの種類があり
ます。最近のガイドラインでは、ドパミン補充剤とドパミン受容体刺激剤(ドパミン
アゴニスト)の系統の薬剤による治療が主体になっています。これらのパーキンソン
病に対する薬は症状を改善する作用はありますが、病気自体の進行を止めたり元に戻
したりすることはできません。
したがって、パーキンソン病と診断されても日常生活 に支障のない場合は適度な運動
をしながら通常どおりの生活をして経過をみることも あります。また、特定の症状に対し
ては脳神経外科的に手術によって脳機能の調節を 行う場合もあります。
パーキンソン病の治療は、画一的なお仕着せのものではなく、 個々の患者さんの状況
に適したオーダーメードの内容であることが必要です。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.42(2005年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

手足のふるえや動作が鈍くなる病気の代表であるパーキンソン病は、脳のなかで身体を動かすための神経に指令を送る働きをしているドパミンという物質(神経伝達物質)が少なくなるために起こります。
このドパミンは脳の奥(中脳)にある黒質と呼ばれる部分の神経細胞で作られますが、パーキンソン病ではこの細胞が減っています。一般にドパミンを作る細胞が通常の人の2割程度にまで減少するとパーキンソン病が発症するとされています。だれでも老化によって細胞の数は徐々に減っていくので、もし仮に150歳まで生きるとすればすべての人がパーキンソン病になると考えられています。ところが人によってはこのドパミンを作る細胞だけが特に速く減ってしまうことがあるので、中年期から初老期にかけてパーキンソン病になってしまいます。なぜそのようなことが起こるかについて世界中で多くの研究者が調べていますが、今のところ直接的な原因は分かっていません。
ただし脳内のドパミン不足に伴って引き起こされるパーキンソン病の様々な症状やその経過については多くのことが解明されてきました。最近では日本神経学会から日本独自の「パーキンソン病治療ガイドライン」も発表され、治療成績の向上が図られています。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.41(2004年12月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 前回にも書きましたがパーキンソン病の主な症状は、手足のふるえ(振戦)、動作が遅くなる(無動)、筋肉の緊張が高まり固くなる(固縮)、姿勢のバランスが悪くなる(姿勢保持反射障害)などです。これらの症状は全員にすべてが揃うものでなく、ひとによって違いが見られます。パーキンソン病は一般に50-60歳代に発症することが多く、約60-70%のひとは片方の手あるいは足のふるえからはじまります(じっとしている時にふるえます)。10-20%のひとでは、動作が全体的に鈍くなったり、歩きにくくなったということで気づかれます。パーキンソン病は血液、脳波、CT・MRIなどの検査では特に異常がないことが特徴で、症状や経過などを参考にして神経学的な診察をもとに診断される病気です。パーキンソン病のような症状(パーキンソン症状)は、脳卒中の後遺症や特殊な脳神経の病気あるいは一部の薬の影響などでも起こることがあります。パーキンソン症状のために初めて神経内科を受診したひとのうち、実際にパーキンソン病だった者は60%ほどに過ぎなかったとの報告もあります(三重大学・葛原,2000年)。パーキンソン病の診断や治療はこのような背景を十分考えた上で、専門的に行われる必要があります。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.40(2004年11月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 パーキンソン病でよく見られる症状は、手足のふるえ(振戦)、動作が遅くなる(無動)、筋肉の緊張が高まり固くなる(固縮)、姿勢のバランスが悪くなる(姿勢保持反射障害)などです。これらの症状が個々の人によっていろいろな組み合わせで起こり、徐々に日常生活上の動作(起立、歩行、食事、着替え、入浴など)に支障がでてきます。ほかにも便秘や発汗の異常などの自律神経系の症状や気分が落ち込むなどの精神的な症状を伴う人もいます。パーキンソン病は1817年にイギリスのパーキンソン医師によって初めて報告されました。その後の研究により、この病気は脳の中のドパミンという物質が不足するために起こることがわかりました。そこで、足りなくなるドパミンを補充するための薬剤が開発され臨床の場で使われています。このような治療により最近ではパーキンソン病と診断されても、社会生活や日常生活をさほど差し支えなくおこなっている方々も数多くおられます。パーキンソン病の有名人には、 映画「バック・トウ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスやボクシングのモハメド・アリ、ローマ法王のヨハネ・パウロ2世、日本では作家の江戸川乱歩や三浦綾子などが挙げられます。



  パーキンソン病とは

地域情報誌「ともも」、No.39(2004年10月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

手足がふるえたり、体の動きが鈍くなるパーキンソン病についてこれから数回お話します。この病気は『ともも20号(15年3月)』でも取り上げましたし、『神戸新聞(16年8月18日朝刊)』の「カルテQ&A」の欄でも読者からの質問に答えて簡単な解説を書きました。また、先日のNHK教育テレビでは落語家の桂小米朝さんが、お母様(桂米朝さんの奥様)がパーキンソン病を発症され、現在もご自宅で療養されている経緯を語っておられました。
 この小米朝さんのお話しは今年の読売新聞にも体験談として連載(16年1月〜2月の月曜日の朝刊)されていて、同紙のホームページでも読めます(「医療と介護」のなかの「ケアノート」)。同紙にはこの連載の後に読者からの多くの反響が寄せられたそうですが、その記事の中にも「専門医の 探し方、治療法など、この病気についての情報が少ないことがうかがわれました」とあります。パーキンソン病はあまり一般には知られておらず、適切な診断や治療を受けていない場合も少なくないようです。この病気の方は日本で約12万人とされ、西宮市だけでも400〜500人の患者さんがいると考えられます。



  頭痛でお悩みの方に

地域情報誌「ともも」、No.38(2004年9月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

今回は西宮市医師会・第5回市民健康フォーラム「頭痛でお悩みの方に」のご案内です。
●日時:平成16年9月18日(土) 午後2時〜4時
●場所:フレンテホール(JR西宮駅南側、フレンテ西宮5階)
●講演〇焚顱Г弔舛笋淨皺淵リニック・土山雅人
『怖い頭痛と怖くない頭痛』西宮協立脳外科病院・三宅裕治
●講演∋焚顱兵庫医大内科(脳神経・脳卒中)・芳川浩男
『片頭痛の症状とその対処法』山口クリニック・山口三千夫
●講演後に上記の司会・演者などによるQ&Aコーナー
頭痛はありふれた症状ですが、その原因や対処法はさまざまです。このフォーラムは 頭痛の正しい知識を持ってもらうため企画されました。参加希望者はハガキまたは FAXで、西宮市医師会「市民健康フォーラム」係り(〒662-0913 染殿町8-3、FAX:26−0664)までご応募ください。申し込みには、〕絞愴峭罅↓⊇蚕蝓↓氏名(フリガナ)、づ渡暖峭罎魑入してください。テ痛に関する問があれば併せてお書きください。定員は250名(参加費無料)。お問い合わせは医師会事務局(TEL:26-0662)まで。



  頭痛のいろいろ

地域情報誌「ともも」、No.37(2004年8月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 先日、西宮で脳神経疾患に関する医療・介護関係者向けの研究会を開催し、 特別講演(山口クリニック・山口三千夫院長)として「頭痛」を取り上げました。その内容の一部を紹介します。頭痛には、「こわい頭痛」と「こまった頭痛」があります。「こわい頭痛」とは、くも膜下出血や脳腫瘍などの命にかかわる脳神経疾患によって起こる頭痛です。この場合は適切な治療の時期を逃すと取り返しのつかない結果になりますが、実際には頭痛診療が専門の医療機関でもこのような「こわい頭痛」は来られる患者さんの何百人にひとり程度で頻度としては稀です。一方、「こまった頭痛」とは命には別状ないが繰り返す頭痛のために社会生活や家庭生活に支障をきたすもので、最近では「慢性頭痛」とも呼ばれています。この中には、脈打つようなズキズキとした痛みが特徴の「片頭痛」や頭が締めつけられるように痛む「緊張型頭 」などがあります。「こまった頭痛」では生活の質を高めるために、それぞれの頭痛の病状に応じた治療を行う必要があります。9月に西宮でこのような頭痛に関する 市民向けの講演会が予定されています。次回にその案内を記します



  鎮痛剤と頭痛

地域情報誌「ともも」、No.36(2004年7月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 「薬を飲みたいという願望は、・・・本当に我々が戦わなければならない最も重大な問題点のひとつでもある。」これは有名な医師であるOsler先生が1895年に残された言葉です。このように100年以上前から薬の飲みすぎは大きな問題とされてきました。最近では病院の頭痛専門外来を受診する患者さんの1割ほどが、鎮痛剤の長期にわたる過剰な服用(乱用)によって起こる「鎮痛剤誘発頭痛」であるとも言われています。当初はなんらかの原因による頭痛であっても、痛みを恐れるあまりに痛み止めの薬を過度にのみ続けることで薬に依存的となり、かえって毎日のように頭痛を起こしてしまっている人が少なくないようです(“頭痛薬が頭痛を生む”)。市販の頭痛薬でも週に5日以上の服用を数ヶ月以上続けている場合は注意すべきです。このタイプの頭痛は薬が切れる時間帯の夜間や起床時に生じることが多く、いらいら感や集中力の低下、うつ的な気分などを伴うこともあります。対処するには原因となっている痛み止めの薬を思いきって中止するしかありません。薬を止めるとその反動による頭痛にしばらく悩みますが、その後痛みは自然に治まります。



  脳卒中週間

地域情報誌「ともも」、No.35(2004年6月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 今年は有名な元野球監督が脳梗塞で入院するなど、例年にまして脳卒中への関心が高まっています。私も4月に西宮の地元ラジオ局の“さくらFM”で脳卒中のお話しをする機会がありました。脳卒中に関する啓蒙活動や脳卒中患者さんの支援活動を行っている日本脳卒中協会は、平成14年度から毎年の5月25日から31日までを「脳卒中週間」として脳卒中のキャンペーン活動をおこなっています。この時期が選ばれた理由は、脳卒中の大部分を占める脳梗塞の発症が一年を通じてみると春に少なく、6〜8月にかけて増加するためです。今年も「脳卒中予防は日々の暮らしから」をこの期間の標語としてポスターを作製し、全国的各地で研究会や講演会を行っています(詳細は日本脳卒中協会のホームページ:http://jsa-web.org/で確認できます)。尚、日本脳卒中協会では「脳卒中なんでも電話相談」を行っています。毎月第4土曜日(10時〜16時)は大阪の事務局:06−6629−7378が担当しています。脳卒中の療養に関する質問があればお気軽にお電話ください(この電話相談は脳卒中協会の
会員でなくとも利用できます)。 



  まぶたが下がる

地域情報誌「ともも」、No.34(2004年5月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 まぶたが下がることを「眼瞼(がんけん)下垂」と呼びます。目が開くためには、上眼瞼が眼瞼挙筋という筋肉によって引っ張り上げられる必要があります。老人ではこの筋肉や附属する挙筋腱膜がゆるくなって弛緩するために眼瞼下垂が起こることがよくあります。垂れ下がった眼瞼により視界がさえぎられる場合には、眼瞼挙筋を縫い縮める手術が効果的です。またコンタクトレンズを長期に使用している場合にもこの筋肉や腱膜に障害が生じて眼瞼下垂をきたすことがあります。脳神経内科で問題となる眼瞼下垂の原因には、動眼神経麻痺と重症筋無力症が挙げられます。動眼神経麻痺は糖尿病や動脈硬化の強いひとに突然生じることがあります。稀ですが脳動脈瘤や脳腫瘍などによっても起こります。重症筋無力症は免疫の異常によって起こる病気です。この場合は筋肉が疲労しやすいので、朝は目が開いているが夕方になると目が閉じてくるといった、症状の日内変動が特徴的です。このように眼瞼下垂をきたす原因は様々です。眼球の動き方や瞳孔の反応などを参考に、各々の状態に応じた検査を進める必要があります。



  顔面の痛み

地域情報誌「ともも」、No.33(2004年4月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 激しい顔面の痛みを起こす病気に三叉(さんさ)神経痛があります。三叉神経とは顔面全体や口中の粘膜、歯牙などの感覚(痛みや熱さ、触れた感じなど)を脳に伝える働きをしている神経です。この三叉神経になんらかの異常が生じると、これらの部位に発作的に電撃の走るような強い痛みが起こります。この痛みの特徴は、左右のいずれかの顔面の決まった場所に起こること、洗顔・歯磨き・食事などをきっかけに起こること、「焼け火箸を突き刺される」ほどの激痛であることなどが挙げられます。

 三叉神経痛が繰り返し起こるとしだいに食事や会話がおっくうになって、体力が低下したり抑うつ的になったりすることがあります。前回の「顔面神経麻痺」とは違って顔には外観的な異常はありませんので、他人にはなかなかこの痛みの状態が理解されにくいようです。三叉神経痛の多く(90%以上)は、頭蓋のなかで三叉神経と血管が接触し圧迫が加わるために起こります(これは前々回の「片側顔面痙攣」の原因とよく似ています)。治療としては、内服薬やブロック注射あるいは三叉神経と接触している血管を引き離す手術(微小血管減圧術)などが行われます。



  顔面の麻痺

地域情報誌「ともも」、No.32(2004年3月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 急に顔の片側の筋肉に力が入らなくなって動かなくなることがあります。額にしわを寄せることや片目をつぶることができなくなったり、唇が十分閉じずによだれがこぼれたり、表情が左右非対称になったりします(いわゆる「顔が曲がった状態」)。これは顔の筋肉の動きをコントロールしている顔面神経に麻痺が起こったための症状(顔面神経麻痺)です。顔面神経には、味覚や涙・唾液の分泌、鼓膜の調節などに関係する神経も含まれているので、顔面神経麻痺の際にはこれらの働きが障害されることもあります。この麻痺症状は顔面神経に炎症が起こり、神経が腫れてむくんでしまうために生じます。稀にヘルペスウイルスによって炎症が生じること(ハント症候群)もあり、このときは麻痺側の耳の周辺に水疱や痛みを伴います。治療としては、発症早期では神経の腫れをとるためにステロイド剤が用いられます。その他にもビタミン剤や循環改善剤などが併用されます。さらに神経の血流を良くするために星状神経節ブロックを行う施設もあります。このような治療によって麻痺の大部分は改善しますが、長い場合には回復に数ヶ月かかることもあります。    



  顔面のピクつき

地域情報誌「ともも」、No.31(2004年2月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 顔面が勝手にピクついて動くと非常に気になるものです。これには、目尻のあたりだけが部分的にピクピクと動く場合(眼瞼の筋痙攣)と左右どちらかの目から頬にかけての広い範囲が引き攣るように動く場合(片側顔面痙攣)があります。前者の「眼瞼の筋痙攣」は過労や睡眠不足などによって起こることが多く、特に病的なものではありません。通常はしばらくすると自然に止まります。後者の「片側顔面痙攣」はひどくなると、勝手に片目がふさがってしまったり顔がゆがんだりするようになります。ただし次々回に取り上げる三叉神経痛と違って痛みは伴いません。この顔面の引き攣りの原因のほとんどは、顔の筋肉を動かしている神経(顔面神経)に血管が接触し圧迫が加わるために起こります。稀に脳腫瘍などでも同様の症状が出ることがあるので、一度は脳の検査を行っておいた方が良いでしょう。症状が強い人には、脳神経外科で顔面神経と血管を引き離す手術(微小血管減圧術)が行われます。手術の負担を避けたい場合には、ボツリヌス毒素の製剤を顔面筋に注射して引き攣りを抑える治療法(ボトックス療法)が行われることがあります。

  味がしない

地域情報誌「ともも」、No.30(2004年1月号)掲載

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

  年をとるとともに食べ物の味が薄く感じられる人(味覚減退)が増えていきます。なかには、味を全く感じない(味覚消失)、特定の味だけを感じない(解離性味覚障害)、常に口の中が渋い・苦い(自発性異常味覚)、食べ物の本来の味とは違う味がする(異味症)など、様々な味覚の障害を訴える方もおられます。このような味覚障害の原因はいくつかありますが、最近の研究(富田,1997)ではその70%弱が亜鉛の欠乏に関連したものでした。亜鉛は生体内では鉄に次いで多い重要な微量元素で、実際に舌で味を感じている味蕾(みらい)細胞が正常に機能するために不可欠な栄養素です。亜鉛が低下するのは、食事からの摂取が少ない場合(食事性)、ある種の薬の影響(キレート作用)で下がる場合(薬剤性)、胃腸の手術や肝臓の病気に伴う場合(全身性)などがあります。高齢者では食事は摂っているものの「適正な栄養摂取」がなされていないことがあり、潜在的な亜鉛欠乏者は少なくありません。また、若い人でもインスタント食品やファストフードに頼っていると亜鉛不足になっていることがあります。これらの味覚障害は亜鉛の補充で回復が期待できます。(次回は【顔面のピクつき】です)

  脱力感

(地域情報誌「ともも」、No.29(2003年12月号)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 「体の力が抜けてだるい感じがする」とのことで高齢の女性が当院を受診されました。診察では特に神経学的な異常はなかったのですが、脱力感が強いようなので血液検査を行いました。その結果、血液中のカリウムの値が下がっていること(低カリウム血症)が判明しました。カリウムは人体に不可欠な栄養成分の一種であり、電解質と呼ばれるもののひとつです。カリウムは筋肉が動く(筋収縮)のに必要で、体内のカリウムが少なくなると筋肉が疲れやすくなり倦怠感が生じます。下がりすぎると心臓の筋肉にも影響が出て不整脈が起こることもあります。カリウムが下がる原因はいくつかあります。腎臓の病気、嘔吐・下痢で体液が失われた場合、極端な食生活の乱れ(拒食症など)、ある種の下剤や利尿剤などの影響などが挙げられます。この方の場合は、10年以上にわたって市販の下剤を自分で購入して服用していることがわかりました。この下剤は長期の使用によって低カリウム血症を起こすことが知られている薬剤でしたので他の下剤に変更し、食事療法の指導を行ったところ徐々に症状は改善しました。市販の薬でも長期連用にご注意ください。

  寝ぼけ

(地域情報誌「ともも」、No.28(2003年11月号)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 子供が寝ぼけることはよく見かけますが、高齢者でも夜中に寝ぼけるひとがいます。ある調査では、一般の老年者の6.3%に夢遊病様の異常な行動があったと報告されています。その異常な行動が、夢の内容につられて起こっている、特に悪夢とともに起こっているようならレム睡眠行動障害という病気の可能性があります(レム睡眠とは睡眠中に夢をみている状態を指します)。この場合には、寝入って1時間ほど経ってから、大声をあげる、周囲のものを殴る・蹴る、ひどい時には起き上がって走り出すなど、暴力的で爆発的な行動をとり、周囲に危害が及ぶほどのこともあります。同室でやすんでいる家族が危機感を抱いて、本人を外来に連れてくることが少なくありません。本症では寝ぼけた際にも比較的容易に目覚めさせることができるのが特徴で、似たような寝ぼけを起こす夜間せん妄とは異なります。多くは50−60歳頃から始まり、加齢とともに増加します。通常、日中の生活では異常ありません。発症の原因は不明ですが、昼間の精神的ストレスが症状出現のきっかけとなることがあります。寝ぼけの程度がひどい時は投薬治療で落ち着かせる必要があります。

  むずむず脚症候群

(地域情報誌「ともも」、No.27(2003年10月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 不眠の原因のひとつとして、下肢にむずむずした感じがして眠れないと言う場合があります。これは以前から欧米では「restless legs syndrome」と呼ばれていた病気で、最近では日本でも「むずむず脚症候群」として注目されています。年齢や性別に関係なく人口の5%程度にみられるとされていますが、高齢者や妊婦により多いようです。これを疑うポイントは、(1)寝入りばなにふくらはぎを中心に「虫が這うような」あるいは「カッカッとほてるような」異常感覚が起こる、(2)脚を動かしたり歩き回ったりするとこの「むずむず感」は軽くなるが、安静にすると強くなる、(3)このため夜間に熟睡できないので、日中に眠気がしたり気分がふさぎ込むようになる、(4)なかには寝ている間に足指や足首がピクピクと勝手に動くひともいます。今のところ詳しい発症の原因は不明ですが、ビタミン、ミネラルの不足、アルコール、カフェインなどの摂りすぎがきっかけとなることがあり、貧血、腎不全、パーキンソン病などに伴って起こる場合も報告されています。対応はひとによって異なります。入浴、マッ サージ、湿布などで軽くなることもありますが、程度によっては投薬による治療を考えます。

  不眠

(地域情報誌「ともも」、No.26(2003年9月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

  不眠で悩む方は少なくありません。睡眠には個人差があるので、「睡眠時間が短い=病気」とは限りません。不眠のなかには日常生活の改善によって解消する場合もあります。厚生労働省から出された不眠に関する研究報告の要点を紹介します。(1)睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分(歳をとると必要な睡眠時間は短くなる)。(2)刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法(軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング)。(3)眠たくなってから床に就く、就寝時間にこだわり過ぎない。(4)同じ時刻に毎日起床。(5)光の利用で良い睡眠(目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン)。(6)規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣。(7)昼寝をするなら、15時前の20−30分(夕方以降の昼寝や長い昼寝は、夜の睡眠に悪影響)。(8)眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに。(9)睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意(後者は次回に解説)。(10)十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に。(11)睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと。(12)睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。(次回は【むずむず脚症候群】です)

  脳卒中予防十か条

(地域情報誌「ともも」、No.25(2003年8月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 脳卒中は予防が重要です。脳卒中を起こしやすくする因子(危険因子)に注意しましょう。日本脳卒中協会は今年2月に脳卒中予防のための十か条を作り、脳卒中予防のポイントを一般の方々に分かりやすく伝えています。今回はその十か条を引用します。(1)手始めに高血圧から治しましょう (2)糖尿病、放っておいたら悔い残る (3)不整脈、見つかり次第すぐ受診 (4)予防にはタバコを止める意思を持て (5)アルコール、控えめは薬、過ぎれば毒 (6)高すぎるコレステロールも見逃すな (7)お食事の塩分・脂肪控えめに (8)体力に合った運動続けよう (9)万病の引き金になる太りすぎ (10)脳卒中、起きたらすぐに病院へ。このほかにも、特に夏場に汗をかいて脱水状態になると血液の流れが悪くなり、脳梗塞を起こしやすくなります。十分な水分補給を心がけましょう。本格的な脳卒中発作の前ぶれとして脳卒中の症状(「ともも24号」を参照)と同じような神経症状が一時的(多くは15分以内で症状消失)に見られることがあります。これを「一過性脳虚血発作」と呼びます。症状が軽かったり短時間で治ったりしても、そのような場合は脳神経専門医にご相談ください。

  脳卒中の症状

(地域情報誌「ともも」、No.24(2003年7月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 脳卒中は脳血管障害とも呼ばれ、文字通り脳の中の血液循環の異常によって起こる病気です。脳卒中は脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と血管が切れて起こる「脳出血」および「くも膜下出血」に大きく分かれます。日本では最近は特に高齢者の脳梗塞が増えています。脳卒中は血液の流れが急に乱れるために、いきなり症状が出るのが特徴です。脳は各部位によって担当している働きが違います(例えば、手足を動かす神経と手足の感覚を伝える神経は脳の中では別々のところにあります)。したがって脳の中のどこの部位の血管に障害が起こったかによって、脳卒中の症状は様々です。また神経の線維は脳の中で交差しているので、大脳の右側に障害が生じれば体の左側に症状が出るのが通常です。

 脳卒中の初期症状としては次のようなものがあります。片側の手足が痺れて力が入らない(物を持てない、足が上がらないなど)、片側の眼だけが見えにくい、ろれつが回らずうまく喋れない、体のバランスがとれない、めまいが続いて動けない、頭が痛くて吐く、意識がはっきりしない。これらの症状が突然あらわれた場合には直ちに脳神経専門医を受診してください。

  脳卒中の現状

(地域情報誌「ともも」、No.23(2003年6月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

  脳卒中の診断や治療の技術は年々進歩し、脳卒中による死亡者数はこの30年の間で半減しました。この脳卒中による死亡の減少は主に比較的若い高血圧性脳出血の患者さんが少なくなったためで、社会の高齢化に伴って高齢の脳梗塞の患者さんはむしろ増加しています。脳卒中後の生存者のうち、10%が寝たきり、17%が要介助、36%が自立はできるもののなんらかの障害を持ち、特に不自由のない者は3分の1強にしか過ぎません。このように後遺症を持つ患者が多いこともあり、初めて発症した脳卒中患者さんは1年後には約20%が死亡しているとも言われています。さらに長期的にみると、脳卒中の再発率は年間5〜10%と少なくありません。当然のことながら再発の度に患者の活動性は低下し、介護の必要性は増大していきます。その結果、現在の「寝たきり老人」124万人のうちの30%は脳卒中が原因となっています。このため脳卒中にかかる医療費用は年間1.8兆円と、癌の2.1兆円、高血圧の1.9兆円に次いで第3位です。このように脳卒中は医学的にも社会的にも重要な病気であると言えます。

  脳卒中週間

(地域情報誌「ともも」、No.22(2003年5月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 脳卒中の患者さんは全国で170万人以上おられます。近年脳卒中で亡くなる人は減少しています(年間13万人)が、それでも西宮市にあてはめると年間400〜500人の方が脳卒中で亡くなっている計算になります。また脳卒中は一旦発症すると後遺症を残すことが多いために、寝たきり老人の約4割あるいは訪問看護サービス利用者の約4割が脳卒中の患者さんであると言われています。脳卒中は発症を予防することが極めて重要な病気です。しかし意外と脳卒中の実態は知られていません。そこで昨年から日本脳卒中協会は毎年5月25日から31日を脳卒中週間と定めて脳卒中の啓発活動を行っています。今年は「脳卒中予防は日々の暮らしから」の標語を掲げて、各地で関連のイベントを行います。ぜひこの機会に脳卒中についての理解を深めていただきたいと思います。尚、日本脳卒中協会では「脳卒中なんでも電話相談」を行っています。毎月第4土曜日(10時〜16時)は大阪の事務局:06−6629−7378(http://www.patos.one.ne.jp/public/jsa/index.ssi)が担当しています(私も相談員のひとりです)。脳卒中に関する疑問や入会の希望があれば、お気軽にお電話ください。

  物忘れ

(地域情報誌「ともも」、No.21(2003年4月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 今回は一過性全健忘という少し珍しい物忘れの病気を紹介します。これは全く普通に生活している人に一時的に起こる特殊な記憶障害です。特に前触れなく突然ある時から新しい事柄を憶えることが出来なくなります(前向性健忘)。自分のおかれている状況がすぐ分からなくなるので、「今日は何日?」、「ここはどこ?」など同じことを何回も繰り返し尋ねる行動が特徴的です。よく聞き出すとしばらく前に起こったことも思い出せない(逆向性健忘)ことが判明します。本人の意識はしっかりしており、記憶障害以外に異常はないので日常の生活は可能です。この記憶障害の発作は数時間から1日程度で自然におさまり、元通りに回復します。症状が続いていた間の記憶だけは将来も抜け落ちたままですが、後に痴呆などになることはありません。ほとんどの一過性全健忘は生涯1回きりで終わります。原因としては脳の中の海馬(かいば)と呼ばれる記憶に関係する部分の一時的な血流の障害が考えられています。ただし似たようなことは睡眠導入剤などの薬物や内科的な病気あるいは脳卒中、脳腫瘍などでも起こりますので、これらとは区別する必要があります。

  ふるえ

(地域情報誌「ともも」、No.20(2003年3月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 いつの間にか気がつくと手や足がふるえるようになって来た人はパーキンソン病を疑ってみる必要があります。耳慣れない病名かもしれませんが、実は人口10万人当たり100−150人ほどの患者さんがいると言われるポピュラーな病気です。この病気のふるえはじっとしている時に目立つのが特徴です。その他にも動作が鈍くなる、姿勢のバランスが悪くなるなど身体の運動機能に障害が見られます。顔つきが硬くなったり声が出にくくなったり、背中を曲げた小刻みな歩き方になったりもします。よだれが出たり便秘することもよくあります。パーキンソン病は血液やレントゲン・MRIなどの検査には特に異常は出ません。脳神経内科では専門的な神経学的診察によって特有の症状を見つけ出すことによって診断を進めていきます。この病気は脳の中でドパミンという物質が足りなくなるために起こります。そのため、薬でこの足りない物質を補ってやると症状は好転します。服薬を続けることで特に不自由なく仕事や家庭生活を行っている人も少なくありません。糖尿病や高血圧のように長く付き合っていく性質の病気ですので、根気よく治療を継続していくことが重要です。

  しびれ

(地域情報誌「ともも」、No.19(2003年2月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 脳神経内科には手足のしびれ感のために受診される方が多数おられます。今回は特有の手指のしびれを生じる手根管(しゅこんかん)症候群を取り上げます。手根管症候群では人差し指や中指を中心に親指や薬指の一部にかけて、触った感じが鈍くなったりビリビリしたしびれを感じたりします。初期には夜中に手指のしびれで眼を覚ますことがありますが、そんな時でも手を揉んだり振ったりすることでしびれが一時的に軽くなるのが特徴です。症状が進むとしびれはしだいに一日中続くようになり、手作業が困難になります。さらには指先に力が入らず物がつまみにくくなる人もあります。これは手のつけ根の部分(手根管部)で指先に向かう神経(正中神経)が圧迫されるために起こります。手を良く使う人に多いようですが、妊婦や授乳期の女性にも見られます。なかには甲状腺ホンモンの異常などの病気に伴って起こる場合もあります。頚椎の変形によるしびれやリウマチ、腱鞘炎などとは区別する必要があります。病状や原因によって治療方法は異なりますが、まずは手の使いすぎを避けるのが肝心です。

  めまい

(地域情報誌「ともも」、No18(2003年1月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

  いわゆる“めまい”には、グルグルと目がまわる回転性めまい、フラフラと体が揺れる動揺性めまい、 フーッと気が遠くなるような失神型めまいなど様々なタイプが含まれています。“めまい”患者さんの約半数は回転性めまいですが、そのなかで最も多いものが頭位性めまい(正式には良性発作性頭位変換眩暈症)です。これは頭の位置を急に変えた時、例えば寝返りを打ったときや美容院で洗髪をしたときなどに回転性めまいを生じますが、じっとしていると30秒以内に治まるのが特徴です。頭位性めまいは耳の奥の内耳にある三半規管の部分的な障害で起こるために、内耳全体の機能が悪くなるメニエール病とは違って耳鳴りや難聴はありません。頭位性めまいでは頭を動かすたびにだんだんめまいが軽くなっていく慣れの現象がみられます。脳の異常がないことが確認されれば、めまいを恐れずに積極的に体を動かす方が良いとされています。

  頭 痛

(地域情報誌「ともも」、No17(2002年12月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

 脳神経内科にはいろいろな症状の方が来られます。それらの症状を来たす代表的な病気についてこれから順に解説していきます。今回は頭痛の代表として片頭痛を取り上げます。片頭痛は単に頭の片側が痛くなるものではありません。片頭痛はズキズキ・ガンガンとした脈打つような痛みを特徴とするひとつの病気です。詳しく調べると日本人の8.4%が片頭痛を持っていると推定され、そのうちの多くが日常生活や社会生活に支障を来たしていると考えられています。しかし驚くべきことに自分自身が片頭痛であると正しく認識している人は1割程度しかおらず、大半は医療機関で適切な治療を受けることなく市販薬で痛みを耐え忍んでいるのが実態のようです。最近は片頭痛の研究が大きく進歩し、片頭痛専用の痛みを止める薬(トリプタン系薬剤)や頭痛を予防する薬(塩酸ロメリジン)が開発されています。脳神経内科では国際的な診断基準を参考に片頭痛の診療を行い、必要に応じてこれらの薬を処方しています。

  めまいや頭痛、しびれの原因をしらべましょう

(地域情報誌「ともも」、No.16(2002年11月)掲載)

つちやま内科クリニック 院長 土山雅人

―脳神経内科にはどのような患者さんが来られますか?

 患者さんの多くは、めまいや頭痛、しびれ、ふるえ、ふらつき、物忘れなどの日常よく経験する症状の方です。このような症状は自分でも詳しく説明しにくいので、病院の何科にかかればよいのか困っている場合が多いようです。神経の働きや筋肉の動きに関係すると思われる症状でどの科の先生に診てもらうか迷うようでしたら、ぜひ脳神経内科の専門医にご相談ください。

―女性では頭痛の人が多いようですが?

 長年の頭痛で悩んでいる方は少なくありません。日常生活や仕事に大きな支障を来たしている場合もありますが、本人の苦しみが周囲になかなか伝わらないのが歯がゆいところです。このような慢性頭痛の原因には、脳血管の脈打つ動きに関連した片頭痛や頭頚部の筋肉のコリに関連した緊張型頭痛などがあります。若い女性に多い片頭痛では、最近トリプタン製剤という薬が使われるようになり、痛みから救われる人が増えています。日本には推定で800万人の片頭痛の方がいますが、正しく片頭痛の診断を受けて適切な治療をなされている人はまだ限られているようです。

―そのほかにはどんな病気を診ているのですか?

 脳神経内科の代表的な病気としては脳卒中やパーキンソン病などが挙げられます。その他に小脳変性症や筋萎縮症などの神経難病といったあまり聞きなれない病気も扱います。これらの病気は発症当初は特別な診断機器や治療手技が必要なので大きな病院で診てもらいますが、病状が落ち着けばそれらの病院と連携をとりながら当院で診療を継続していきます。脳卒中では再発の予防、パーキンソン病や神経難病では介護・福祉も含めたトータルケアを心がけています。

―医療のモットーは?

 脳神経の病気にはまだまだ未知の部分があります。しかしこの分野は着実に日々進歩しています。「分からない、治らない」と思うことも、あきらめないで取り組んでいきたいと思います。

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